朝水想のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
第46回小説推理新人賞受賞作。
設定がなかなかおもしろい。
探偵役の主人公は「お稲荷さま」。江戸時代から続く、町の小さな神社に祀られている。
実は「大神様」により、天界から遣わされた、「やわ神」と呼ばれる半人前の神様の1人である。やわ神たちは、皆、少年少女の姿をしている。「誉人(ほまれびと)」と呼ばれる、選ばれし人間の願いを叶えてやることになっている。100人の誉人の願いを叶えた暁には、大人の姿になり、天界に戻ることができる。
半人前なので、あまり大きな力はない。「地上の生き物すべてに姿を変えることができる力」、そして「人間の枕元に立てばそのものを操ることができる力(但し、一晩に一人のみ)」の2つである。
これを駆使して誉人の願いを叶えるよう努力するわけである。大神様曰く、「是非を問わず、過不足なく」。誉人に「なぜそのような願いをするのか」と尋ねたり喋らせたりすることは禁じられている。さあ、皆、がんばりたまえ、というわけだ。
さて、お稲荷さま。300年も前に天界から降りて来たのに、誉人の願いを叶えた回数は何と、たったの5回。一緒に天界から降りて来た仲間の多くは100の願いを叶えて次々と天界へ帰っていったという。お稲荷さまの眷属(神に付き従う従者)である狐は、稲荷神と運命を共にする。つまり、お稲荷さまが天界に帰れないのなら、狐もやはり帰れない。巻き添えの狐は怒り心頭である。
やる気がなかったお稲荷さまも、狐に尻を叩かれ、誉人の願いを叶えるべく、ようやく本腰を入れ始める。
しかし、人間どもの願いは意味がわからないものばかり。
「神様、どうか私が殺されますように」
「神様、どうか幽霊に会えますように」
「神様、どうかあの子が選ばれませんように」
「神様、どうかあの人を騙せますように」
・・・いったい何だこれは? どうしろというんだ。
お稲荷さまは、時にヘルパー、時に花火師見習い、時にフィジカルトレーナー、時に事務アルバイトとして、人間に化けて人間界に潜り込み、誉人の真意を探り、願いを叶えられるよう、粉骨砕身、努力をすることになる。何しろ、誉人の願いは「是非を問わず、過不足なく」叶えなければならないのだから。
大枠としては「日常の謎」のくくりに入るのではないかと思う。
一見、訳のわからない願い事だが、その背景には願った人の想いやそれぞれの事情があるわけである。最終的にその真意がわかったとき、バラバラのピースがかちりと嵌る。
稲荷神社の近所には弁財天神社もある。こちらには弁財天と眷属の白蛇がいる。恋愛が叶うと評判である。弁財天は絶世の美少女で、ややつんとしている。白蛇は狐とは仲が悪く、会えば互いにいがみ合っている。
お稲荷さまと弁財天さまは互いの誉人の願いを叶える際、時々すれ違うこともある。時には協力し時には相談することもある。弁財天は稲荷神をやや軽んじている風ではあるが、実はなかなかよいコンビだったりする。
お稲荷さまがかっぱえびせんが好きだったり、弁財天が卵よりマカロンを供えてほしいと思っていたり、ちょっとしたくすぐりも楽しい。
個人的には肝心の謎の切れがいま一つかなぁと思わないでもないのだが、シリーズ化されても楽しい作品かもしれない。なんたって、お稲荷さまはあと90以上も願いを叶えなければならないのだから。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大神様により天界から遣わされた稲荷神社の少年神。選ばれた「誉人」百人の願いを叶えると天界に戻れるという。仲間の神たちが次々と天に戻るなか、三百年を過ぎても未だ数人の願いしか叶えられていない。そんな稲荷神のもとに現れた新たな誉人は「私が殺されますように」と願っていて…。
受賞作の他に4話を収録した著者のデビュー作。
殺されることを願う末期がんの女性。余命わずかなのに殺されたいとはどういうことか。願いを叶えようと奔走する『神様、どうか私が殺されますように』。
強盗に殺された花火職人の夫に幽霊でもいいから会いたいと願う妻の願いを叶える『神様、どうか幽霊に会えますように』。
チームメイトが選ばれないように願う陸上部の女子大生『神様、どうかあの子が選ばれませんように』。
誰かを騙したいと願う男性の真意を探る『神様、どうかあの人を騙せますように』。
自身のことも人間のこともよく知らない少年稲荷神が大神に課された課題をこなしていくうちに人を知っていく。人の死なない(日常系とも違う気がする)ミステリー?表に見えるもの、わかりやすいものだけじゃなく、人間って色々あるよねっていう。稲荷神が少しずつ人を知り神を知り成長していく様子がいい。 -
Posted by ブクログ
神様が神社に願い事をしに来た人の願い事を人間になって叶えてくれる、そして願い事を叶えてやると天界に戻してもらえる。
ちょっとドジだけど、憎めない稲荷神様、人間に化けるときはイナリという若者になる。
同じく弁財天の仲間がいる。こちらと協力して願い事を叶えてやることもある。
願い事だけを叶えてやればいいのだけど、時に人間に近付きすぎることも、人間味溢れる神様。
願い事を叶えるために人間以上に人間らしい行動をとることも。
憎めない神様だ。
神社でお参りするとき、ちゃんと名前と住所も言わなきゃ神様に何処の誰なのか分からないんだって初めて気がついた、今度からちゃんと言おうっと。
天界に帰れるまでの続編があってもいいなぁ。