登場人物は33歳の母・マリゴールドと、13歳の長女・スター、10歳の次女・ドル。3人は生活保護をもらいながら、安い木造アパートに暮らしている。
恋多き無職のアル中である母の奔放っぷりに、しょっちゅう振り回される娘たち。
聡明で美人なスターはほとんどの家事と、マリゴールドのことをただ無邪気に慕うドルのお世話を担ってくれていて、酷い生活環境でも姉妹仲良く寄り添って過ごしていた。
ところがあるとき、マリゴールドがスターの実父であるミッキーを連れ帰ってくる。優しく、お金持ちで、自分の存在を大いに喜んでくれる父親の登場に舞い上がるスター。そんな姉を、羨望とやっかみと寂しさの眼差しでみつめるドル。そして、ようやく再会できた最愛のミッキーを二度と失うまいと、必死さを空回りさせどんどん精神を病んでいくマリゴールド。
やがてスターは、ミッキーのもとで暮らすために家を去ってしまい——。
読みやすい児童書ながらも非常に重たいテーマを扱っていて、全員の行先を、最後の最後までハラハラして見届けることとなった。
「あんな人、大っきらい」スターは小声でいった。まるで、はきだすように。
「そんなことないでしょ」わたしはあわてていった。
「ううん、きらいだよ」
「大好きなんでしょ」
今で言うヤングケアラーであるスターと、まだ子供のままでいられるドルのこのやり取りの対比に、胸がずっと苦しい。
子供騙しの安易な解決は用意されない。さまざまな困難や不安に直面しつつも、登場人物たちはどこまでも生き生きとしていて、切なくあたたかい物語だった。
ちなみに私はマリゴールドと同い歳なうえに、娘たちの年齢までほぼ一緒なのもあって、まったく他人事とは思えず本書を手に取った。
ジャクリーン・ウィルソンさんの描く世界に夢中になっていた頃より二十年以上が経ち、いっぱしの大人になってから読んでもとても素晴らしい作品だった。いま読めてよかった。
ずいぶん昔に刊行されたものの復刊であるが、訳者あとがきによれば、なんと昨年この続編が出版されたらしい。ドルが成長して33歳となり、相変わらずのマリゴールドに尚も手を焼きつつ、タトゥーデザイナーとして働いているのだそう。
日本語訳がでることを望むが、それでもおそらく当分先のはずなので、いっそ原書で読んでみたいと思う。