秩序とは物事の正しい順序や筋道を表す言葉であり、社会などの一定のメンバー数を抱える組織体が整った状態にあるための条理を表す。条理であるから道理に適い、一般的にみて「そうあるべきが正しい」といった様に、筋の通った考え方やそれに基づいた状態にある事を意味する。一方、秩序が乱れるとは、その逆の意味であるから、組織や集団、社会などが、本来持つべき安定した状態やルール、調和が崩れてしまい、統制が効かずにバラバラで混乱したりする事を意味する。そこでは、統制の喪失から生まれたルール違反が横行し、一体感が欠如した結果、皆がバラバラに行動するなどして、集団の纏まりが失われた状態にある。
本書「世界秩序」とはその名の通り、集団や社会を世界レベルで表したものであるから、我々の住む地球上の社会、大半は国家という括りであるが、宗教的な繋がりや国境を超えた地域レベルも含み、その安定性について記載された書籍である。また、現代はグローバル化の時代であり、国家や地域の安定は遥か地球の裏側の出来事の影響まで受けるケースも珍しくない。日本という一国家を見れば、四方を海に囲まれた島国であり、江戸時代は鎖国をしていたから、単一国家としての秩序だけを考えればそれで済んだ。ペリーが黒船で浦賀を訪れた事は、人類が当時の船の動力が、広大な海を越えてまで及ぶ事を意味したし、その後も人類が持つ科学技術力の発達に伴い、飛行機、ミサイル、ロケットなど、空という空間を利用可能になった事で、更に世界が緊密に繋がる要因は増え続けている。
本書はまず世界の統合について、グローバル化を軸に説明を加えた上で、そのあり方を述べていく。そもそも近代技術により齎された統合とは何か、そしてそれに影響する権力主体や、統制のために築かれてきた制度ルール、更にはその制度の影響を受けにくく、元々の地域が共有してきた文化や、人々の規範などである。そして、それらが一つの国を超えて広大な地域に拡大していった歴史を、ローマ帝国やチンギスハーンのモンゴル帝国などを例に挙げて説明していく。
近年それはアメリカに代表される超大国の力に影響される事が顕著になったが、そのアメリカがかつて経験した第一次世界大戦、第二次世界大戦、そしてその後の「世界の警察」を標榜する姿に表される数々の戦争の歴史と共に、アメリカの影響を解説していく。現状トランプ氏の大統領再選により、第二次トランプ政権の動きには世界が注目する。トランプ氏がSNSに投稿すれば、そのメッセージは瞬く間に空間を超えて世界のニュースに報道されるし、場合によっては地域や国家に大きな緊張を齎す。そして中国やインドなど、大量の国民を抱えながら成長を続ける国家の存在、更にはグローバル化の流れから逆行する様な自国最優先の方向への各国の動き方。最終章では日本がそうした複雑な世界の中で、どの様にして生き残るか、更にはかつての様な影響力を及ぼす未来が再び訪れるのか。力の分散により相対的に弱体化するアメリカに追従する流れは、大きなリスクでもあり、目先の利益に近視眼的な動き方になってはいないだろうか。そうした「すぐ先の未来」から「国家百年の大計」を見据えた政策への転換が迫られる中、我々自身が先を読み、一人一人が備え戦略を持たなければ、容易に負け組に落とされる結果が待ち構えている。
本書は「世界秩序」の在り方と歴史から、今後の自身の動き方を探る良いヒントに溢れているだろう。