稲田万里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
彼女は、書く原動力が怒りだと言った。
しかし、やり場のない怒りをぶつけたはずの文章は、ユーモアに富み、リズムを与えられ、読者の心を掴む。
一言でいえば面白いのだけど、どの話も単純な感想に留めることは難しい。
ユーモアの裏の怒りと少しの落胆は、薄れることなくそこにある。
これは、彼女が彼女の怒りに対して行う供養なのかもしれない。
我々は供養されて文学となった彼女の怒りを見送りながら、自分の中の怒りや落胆を供養しているのかもしれない。
彼女の供養に心を重ねられる人々が、彼女に寄り添い、彼女に想いを寄せる。
にもかかわらず、次なる供養を待っている。
彼女も、そして我々も罪深い。