雪妖や氷魔と吸血鬼。白と赤。生と死の境界。
ラフカディオ・ハーンと同時代の文学者が織り成す
怪異譚の13の短編小説集。
・はじめに
一 雪と氷と白魔
「幽霊と悪鬼について(抄訳)」ラフカディオ・ハーン・・・
聞き書きのユキオンナの話の抄訳。血を吸う雪女がいる?
「年老いた乳母の物語」エリザベス・ギャスケル・・・
陰鬱な屋敷から雪の丘に誘う少女と女の正体とは?
「雪の妖術」アルジャーノン・ブラックウッド・・・
真夜中のスケート場での出会いは雪と妖の魅惑の誘い。
「光と光の間で」E.F.ベンスン・・・幻影か?悪夢か?
悍ましい光景は雪の中でも彼に付きまとう。
「北極星号の船長」アーサー・コナン・ドイル・・・捕鯨船の
船長の不可解な行動。日記に綴られた怪異の記録。
二 血と夢と月光
「春の幽霊たち」ラフカディオ・ハーン・・・それは幻影。
春に心に取り憑く場所と幽霊(ファントム)の花嫁。
「死せるクレオールの幻」ラフカディオ・ハーン・・・
血が墓所に眠る彼女を起こした。愛は死の如く強し。
「クラリモンド」テオフィル・ゴーチェ
ラフカディオ・ハーン英訳・・・情熱の恋。
死の唇への接吻が呪われた悪夢の始まり。
「血抜きの幽霊」ジェレマイア・カーティン・・・
サンザシの杖。蘇る死者。血とオートミールは民話の情景。
「忠五郎の話」ラフカディオ・ハーン・・・
日本での再話。忠五郎を誘う異界での婚姻。相手の正体は?
「吸血鬼ドラキュラ(抄訳)」ブラム・ストーカー・・・
長編の一部だが女吸血鬼がなかなかのインパクト。
「あの血が命となるのです」F・マリオン・クローフォード
・・・塚の上に横たわる「もの」。その発端は悲劇。
「カルデンシュタインの吸血鬼」フレデリック・カウルズ
・・・この城には300年存在する吸血鬼の伯爵がいた。
解説、参考文献、翻訳初出一覧有り。
雪や氷の白は神秘的のようだが怪異譚では、
血の赤の如くの凄惨な恐怖が語られる。
それらは生贄を求めるように、人を魅惑する。
テオフィル・ゴーチェの「クラリモンド」と
ラフカディオ・ハーンの再話「忠五郎の話」の共通点が
興味深いものでした。
特にぞくぞくしたのは「光と光の間で」と
「あの血が命となるのです」「カルデンシュタインの吸血鬼」
カルデンシュタインの伯爵がなんだか無惨様みたい。