この本は
「日本の国債発行残高がGDP比200%超」となり
・巨額過ぎて返済困難でインフレをもたらす
・巨額の赤字国債は将来世代につけを回す
と巷間よくいわれている国債発行についての「誤解」(謬見?)に対する検証の書として読める。さらに現下の世界的インフレの構造理解と今後を見通すために時期を得たものだ。
政府債務(国債)はそれを保有している人にとって資産であり、社会が購買力(国債)を将来に移転させる手助けをする。政府は課税によってお金を還収する必要はあるかも知れないが、国債を債務として返済する必要はない。
国債には返済義務がなく将来負担になるものではない。過大な政府支出や過大な国債残高は現在及び将来の経済に問題を生じさせることはあるが、それは国債が返済を必要とするからでも、将来世代にとって負担になるからでもない。政府は財政政策の一環として消費者の購買力を低下させてインフレを抑制するために増税する必要はあるかも知れないが、国債の返済資金を調達するために課税する必要はまったくない。
政府の財政政策と中央銀行の金融政策を一体化した統合政府の考え方が必要で、統合政府のバランスシートで考えるべき。
国債は通常マネーストック(M1、M2、M3のいずれか)の一部とはみなされないが、これは本質的な理由からというよりは慣習によるものだ。税収を上回る政府支出は、銀行預金、銀行券、国債のどの形態で保有されていようと、純名目購買力を生み出す。財政政策はきわめて金融的なものだ。
現代貨幣理論(MMT)の見方では、政府が国債を発行するのは、お金を調達するためではなく、むしろお金を過剰に創造しないようにするためだ。財政機能は貨幣供給量のコントロールを手助けすることを目指している。
貨幣について中央銀行と商業銀行の機能について。
経済で貨幣の多くは商業銀行が融資を行うとき創造される。商業銀行は「受け入れた預金」を「貸出しに回す」のではなく、「貸し出す時」に「預金を生み出す。」
中央銀行は金利をコントロールして商業銀行の貸し出しを減らしたり刺激をして、インフレ抑制や経済の活性化をはかる。
商業銀行と中央銀行と政府は狭義の銀行券と銀行預金ととれえられる貨幣の「創造」と「コントロール」に関与する。
世界では、グローバル金融危機による2007〜9年のグレートリセッションまた新型コロナリセッションで2020年の2〜4月のさらに厳しい景気後退に対して、主要中央銀行は金融政策を緩和し、非伝統的量的緩和(QE)と呼ばれる政策でバランスシートを膨張させた。QEは一般に中央銀行による大規模な「貨幣創造」と評され非難されたが、これは誤解である。QEは通常そうであるように中央銀行による自国国債の購入を伴う場合、それは過去及び現在の財政赤字によって創造された「貨幣」の形態をを変えることと捉えたほうがよい。資産(通常は国債)を「吸い上げる」ことによって、この一連のシステムに貨幣(流動性)を「注入する」だけだ。
アメリカFRB中心の世界金融の仕組みとそもそも貨幣について、金融政策と財政政策、政府と中央銀行や商業銀行の役割、QE、国債発行の意味・・・これらの基本的なことについて、わかりやすく解説している。
2019〜23年のコロナパンデミック時、急激に冷え込む実態経済を維持すべく、アメリカや中国を始め世界の政策当局は非常時対応として、金融面で巨大な流動性を一気に詰み増した。結果として今インフレが世界中を覆っている。
現在、ロシアによるウクライナ侵略やイスラエルのガザ侵攻、そしてアメリカとイスラエルによるイラン攻撃など、世界情勢はますます緊迫化して、原油価格は高騰しインフレが昂じている。
流動性が潤沢なところに戦争特需が発生し、世界の株価や不動産・金など資産価格も騰勢を強めている。
背景となる金融・財政構造、その実態がどうなっているのか理解し整理するために有効な論考である。