世界最高峰のオーケストラ、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、通称ベルリンフィルに関する本が出版された。これまでにもベルリンフィルの歴史についての著書は沢山あるものの、自宅には1冊も無かった。確かに、ナチとフルトベングラーが接近して以降の話は良く知っているが、それ以前の歴史については殆ど知識が無かった。本書は中公新書で1,050円と廉価で、歴史を勉強するには丁度良い分量だったので駅前の書店で購入した。
ベルリンフィルは設立当時から素晴らしい楽団という訳ではなく、市民オケに毛が生えた様な楽団だった。当時ドイツは、美術等の芸術で先行していたフランスに対抗して、音楽を建国の柱とし支援を強化していた。その流れに上手く乗った形でベルリンフィルは急成長していったとのこと。ただ、ドイツ政府の力の入れ方が不安定で、指揮者・練習場の選定及び楽団員の待遇面でマネージャー(支配人)は苦労に苦労を重ねていた。日本でもプロ・アマ問わず、弱小オケの運営が赤字であることと何故か重なって見えてしまう。金回りの一喜一憂で右往左往する時期が長く続くのは本当に痛ましい。
ただ、こんな中でも音楽の実力が徐々に上がっていき、読んでいる私も思わず頑張れ!と何度となく心で呟いた。しかし、この辺りからナチとの関係が深まっていった。所謂「広告塔」になり下がって国内での名声が高まり、海外での演奏旅行で金を荒稼ぎして、急激に巨大化したベルリンフィルの運命や如何に!ジャ、ジャ、ジャ、ジャーーン!
それ以降は既知情報の嵐だったので、読むスピードが急激に上がった。終戦以降の話は数時間で読み終えた。ななめ読みしても良かったのだが、知らない情報が少しでも含まれているかもしれないと思い、文字はしっかり追った。だが、結果的にはあまり実りはなかった。
ほぼ毎年来日するベルリンフィルの演奏会は今年も来週から始まる。ドジャースのチケットには遥かには及ばないが、それでもいい値段はする。日本だけではなく世界各地で演奏し、それこそ荒稼ぎして帰国する。最近ではデジタルコンサートを観ることもなくなった。いつもベストメンバーで演奏するとは限らないからだ。CD・DVD・Blueでは常に完璧な演奏をしているが、最近ではCDすら買うこともなくなった。昔は、ベルリンフィルに入ったら定年まで活躍する人が多かったのだが、最近では入団しても短期間で退団してしまう人が多い。人間関係に問題があるのだろうか。それを反映してかは不明だが、他の一流オーケストラの演奏にハッとすることが多くなってきた。これからベルリンフィルは再度迷走するのではと心配が重なる。頑張れ!ベルリンフィル。