『数学を生み出す脳』を読み進める中で、私が特に興味を持って詳しく調べた内容についてまとめてみました。
この本は、数学という人類の高度な知的活動がどのように脳の働きと結びつき、動物の頃から続く数的認知能力がどのように発展してきたのかを明らかにしています。特に、数的認知の初歩である即時把握や概算の数量効果、ウェーバー・フェヒナーの法則が無意識のうちに私たちの日常の数の理解を支えていることに感銘を受けました。
また、脳の中で数字の形を認識する視覚性数字形状領域と、単語の形を処理する視覚性単語形状領域が異なる活動をしていることや、それが数学的思考の深層にどう関わっているかについての説明も、私には新鮮な驚きでした。心的数直線やSNARC効果のように、数にまつわる認知の空間的な捉え方が脳の左右非対称な周波数チューニングと結びついている点からは、脳の複雑な処理の奥行きを感じました。
数学は単なる計算や記憶の積み重ねではなく、言語能力と結びついた高次元のパターン認知の産物であり、それを支える脳のネットワークや進化の過程についての理解が深まりました。生成AIの抽象化能力が向上している今、数学的思考の基盤となる抽象度の高いパターン認知の考え方はまさに現代技術の潮流とも呼応しており、未来のAIと人間知能の関係性を考えるうえでも示唆に富んでいます。
さらに、発達性計算障害や発達性読字障害という具体的な障害の脳科学的解明が数学的才能の理解に繋がっていること、そして数学的才能とは単純な計算力ではなく、パターンを見抜く高度な認知能力であるという視点は、人間の能力の多様さを考えるきっかけとなりました。
全体として、『数学を生み出す脳』は数学という抽象的な世界と私たちの脳・身体、そして文化が織りなす壮大な物語を、科学的かつ哲学的に解き明かした魅力的な一冊だと感じています。