濱田麻矢のレビュー一覧

  • 半生【はんせい】の絆

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    1930年代から日中戦争の終わりにかけての、たいへんベタな恋愛小説だったが、時代も好みだし文章も美しいのでとても引き込まれた。 彼も彼女もすれ違いの連発。 男も女も旧社会の犠牲者たち。とにかく狭い親類筋の人間関係の中で付いたり離れたり、現代人から見たらもどかしく、又腹立たしい。特に主人公に対する虐待は信じ難いのだが、強く生き抜く姿は呆れるほどあっぱれなのである。思わずラストの再会シーンは目頭が熱くなった。時代の先を行くこの作者は人心の機微にとても敏感な人だったのだろう。

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    2025年11月08日
  • 半生【はんせい】の絆

    Posted by ブクログ

    1931年から‘45年、日中戦争で混乱した中国で上海を舞台にした男女の話で、お互いのすれ違いから恋愛が成就できなかった物語である。

    人間は表に現す行動以上にその内側に何倍もの思考や意識や思惑を秘めている。この作品は心の描写も絶妙で、立場も性格も異なる人が織りなす関係が丁寧に表現されている。翻訳も手伝い、張愛玲の細やかで滑らかな文章は鮮やかで、彼女が類い稀な作家であることを痛感させる。

    物語は上海で姉に代わって祖母と母と四人の兄妹を扶養する曼楨と、南京で妾宅生活をする毛皮商の父に置き去りにされた母と義姉と甥の面倒を見なければならない長男世鈞の二人を中心に展開する。曼楨は若いのに強い意志を持ち

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    2025年11月10日