鈴木崇志のレビュー一覧
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自然的態度を脱して「純粋意識」の領野を切り開いたフッサールの現象学の試みの意義を解説したうえで、そこからふたたび日常生活の場面に還帰するまでの道筋をたどっている解説書です。
著者は、現象学の研究者である谷徹に現象学を学び、本書も谷の『これが現象学だ』(2002年、講談社現代新書)の構成にならっている部分もありますが、よりあたらしいフッサール研究の動向を踏まえた内容になっています。谷の著作には、浩瀚なフッサールおよび現象学の研究書である『意識の自然―現象学の可能性を拓く』(1998年、勁草書房)がありますが、そこではフッサールとカントの関係についてはきわめて軽いあつかいになっています。これに対 -
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現代日本の哲学者である鈴木崇志(1988-)による現象学の入門書。2025年。フッサールの現象学を「経験」概念を軸にして解説する。本書において、現象学は次の二つの問題に取り組む哲学として定義される。則ち、①経験の可能性の条件を解明することと、②対象の種類に応じて経験を分類しそれぞれの経験において対象がどのように与えられるかを記述すること。
本書の記述から窺えるのは、哲学的探究におけるフッサールの実直な姿勢だ。彼は、深遠なレトリックも技巧的な論理展開も用いることなく、ただ経験の内部にとどまって、経験のみに即して、「事象そのものへ」の指針に忠実に、泥臭く現象学を展開していこうとする。尤も、それは -
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現象学の祖であるフッサールに注目して、現象学が掲げている課題、解決する手立てについて簡潔に解説する良書
「現象学的還元」「エポケー」を通じて開かれる純粋な体験流の世界において、私にとって対象が現れるとはどういうことなのかを追求する
フッサール独自の用語法ではあるものの、日常的な語彙から出発して議論を始めていくところに親しみや生活世界の尊重が感じられた。ありふれた「現象」を解明するからこそのやり方だなと思った
前半の「経験の仕組みの問題」「経験の分類の問題」に取り組んでいる段階では、カント的な認識論を感じつつも、私たちの普段の直感にフィットする議論を展開しておりとても興味深かった
後半からは -
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近現代の哲学家が結構通っているっぽい現象学の祖、フッサールの入門書。
マジで最近入門書しか読んでないけど、広く浅く、分野同士の関わり合いとかを学ぶのもきっと大事でしょうと自分を慰めながら読んでいる。
現象学は、「経験の仕組みを明らかにする」哲学ととりあえず自分は理解した。その前提として、世界が自分を超越して存在するという(自然的)判断を停止して〈エポケー〉、対象を自分の経験のうちに引き戻してしまう〈超越論的還元〉操作を学んだ。地味に「超越的」と「超越論的」という哲学によく出てくる表現の差を理解できたのは大きい。
プラトンのイデア論とかカントの物自体、ラッセルのセンスデータみたいなものとの関連