阿部裕介のレビュー一覧
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何軒目か分からないクラブへ向かうタクシーの中で、私たちはミッドナイトピッツァクラブという名を授かった。嘘じゃなくて、私たちのタクシーに衝突するようにして、その名前は私たちのもとにやってきたのだ。
阿部ちゃんは「実際」という言葉を句読点のように用いる。
「砂埃が待ってるからだろうね、光が綺麗に見える」
いつかケニアのゴミ山で見た二重の虹も、空気の汚れによって出現すると聞いた。因果なものだと思う。綺麗な世界では、綺麗なものが見えなくなる。
砂糖と一番相性の良い飲み物はチャイなのでは?という太賀くん
上質な休憩をするために、過酷な旅を必要としているのだ。
31歳という若さもあるだろうし、持ち前の体の -
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上出遼平と仲野太賀がオサレな本を出しているなと本屋で見かけたのがきっかけで何も知らずに手に取った。旅行記兼写真集のようなもの。
阿部裕介という写真家が共通の知人で繋がった3人だが、ニューヨークで集合して仲良くなったMidnight Pizza Clubはネパールに行くことになり、そのネパールで起きたことを綴っている。
クスッと笑える部分もありつつ、人やお礼の仕方などに対して悩んだりモヤっとしている作者がそのまま書いている感じが満遍なくあって面白かった。
耳の聞こえない女性のパン屋で食べたりんごモモがとても気になったし、不便な谷の中で暮らす21歳の少年がリゾート施設を出すまで頑張ってほしいなと思 -
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この本は私の経験を裏切ってくれた。
旅本が好きだ。旅にはいつでも昂る気持ちが付く。不安に期待に興奮に。その昂る気持ちが、ユニークな表現となり、個性溢れる文章となり、そして魅惑的なエッセイとなっていると思う。これまで自分を魅了した紀行文は1人ものが多かった。
1人で黙々と歩くからこそ思考が同じ所を回り、ある気持ちが綿飴が出来る時のように大きくなっていく。肥大した気持ちが良いエッセイの源泉だと思っているし、1人だからこそ肥大しやすいのだと思ってきた。
で、この本はその経験をぶち破った。自分の気持ちを醸造する前に吐き出す相手がいても、文章からネパールに対する著者の温度を感じられる。寧ろ、吐き出