「極悪女王」を観て胸が熱くなった方へ── ビューティー・ペア、クラッシュ・ギャルズに続くもうひとつの伝説、ジャパン女子プロレス。その舞台裏を描いた渾身の一冊。
昨年、NETFLIXで大ヒットした「極悪女王」。
ダンプ松本の極悪同盟、ライオネス飛鳥と長与千種のクラッシュ・ギャルズが一世を風靡した全日本女子プロレスを描いて、当時を知る世代にも、初めて見る令和の若者たちにも、心に深く刻まれる内容だった。
その中で、かつての大スタービューティー・ペアのジャッキー佐藤が新団体で現役復帰を示唆するシーンがある。
その復帰の舞台となるのが、本書で描かれるジャパン女子プロレスだ。
1986年8月17日、後楽園ホールで旗揚げ。
アントニオ猪木の来場。
当時はおニャン子クラブなどで若者文化を牽引していた秋元康プロデュースの話題性もあり、大きな注目を集めるかに思われた。
だが、すぐに団体は暗礁に乗り上げる。
客の入りが伸び悩む会場。
様々な人間模様。
日常茶飯事に起こる経営危機。
その中で、選手たちは確実に実力を身につけていく。
暗中模索のなかで、皆ががむしゃらにもがいていた。
昭和の終わりから平成にかけて、走り続けた。
「彼女たちは、一生懸命練習して、素晴らしい試合をしています。
是非、応援して下さい。会場にも来て下さい」(筆者が尊敬する人物・山本小鉄氏。団体旗揚げ時からのコーチ)
30年ほど前、新日本プロレス両国国技館大会前のロビーで、私が若気の至りで話しかけた際に、真剣に語ってくださった。
本書を読みながら、当時のことを思い出す。
それは筆者が描き出す、過去、現在、未来に燃えたぎる熱に触れたからだろう。
旗揚げ戦から、団体最終試合まで。
全試合をリングアナウンサーとして見届けた筆者でしか記せない、圧倒的な熱量の記録。
それは、プロレスを愛する情熱に裏打ちされている。
読み終わって思う。
「プロレスとは、ゴールのないマラソン」(武藤敬司)であり、「プロレスとは、他に比類なきジャンル」(村松友視)なのだ。
当時の記録は、いまなお、そして未来にも、語り継がれていく。