2014年に監督就任してから10年間で優勝4回、直近の2023-2025は3連覇中の最強の高校、駿台学園。
私のように東京の中学高校でバレーボールをやっていた人間からすれば、知らない人はいない名門校が駿台学園であるが、その駿台学園が最強であり続けるために監督の梅川氏が実践していることや、考えていることを惜しげもなく開陳している。
NECレッドロケッツのアナリスト出身であり、自身も東亜学園で選手だった梅川監督の徹底したデータバレーや、そのデータバレーを実現するための緻密で堅牢な守備力をどう構築していくか、という部分が非常に面白い。
石川祐希の本を読んでいても感じたことだが、兎に角、実戦に役立たない、練習のための練習を徹底的に廃した駿台学園の練習の設計も強さの秘訣なのだろう。球出し一つとっても、想定している試合の1場面によって、出す意図も変わってくる。すべてにおいて合目的的な無駄のない練習スタイルはまさに理想だろう。
ただ、本書を読んで、驚き、感動したのは、梅川監督は常に勝つことだけを目指しているわけではなく、その後も長くバレーボールを続ける際に、必要な基礎的な動作やマインドセット、思考の枠組みを開発することを目的としているという部分である。勝つことへの執念や、その為の正しい努力へ到達する方法、さらに最高学年であれば組織マネジメント等、バレーボールのみならず、その後の社会人として必要な考え方を学ぶことも、梅川監督の下ではできるのではないかと思う。さらに、梅川監督は社会科の教員であることもあり、18歳になれば選挙に行くことを励行し、民主主義を担うための市民教育にも余念がない。
また、伸びる選手のポイントとして、2つ挙げていたことが興味深い。1つは全体的にバランスの良いスキルチャートではなくとも、どこかで突き抜けた強みを持っている選手、もう1つはとにかく質問する選手。突き抜けた強みがある選手は、その強みを生み出した方法で他の能力開発もできる可能性が高いことや、質問を多くする選手は、常に自分の頭で考え、その上で監督からのアドバイスにも開放的で、何より勝つことに余念がない。こうしたコンピテンシーを持つことが伸びやすいという。これも、バレーボール以外にもとても参考になる。