明星聖子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
カフカの『変身』、最初読んだ時には、ゲジゲジのようなものを連想した。グレゴール・ザムザがカ行とサ行の濁音だったからか。
目が覚めた主人公が変身していたのはUngeziefer。過去には虫と訳されていた。原義は「有害な虫や小動物」。だから、虫、虫けら、毒虫だけでなく、ネズミなどもありえる。2015年に出た多和田葉子訳では、そのまま「ウンゲツィーファー」にしていた。英訳もinsectかverminかでもめている。人騒がせなカフカ先生、絵でも添えてくれればよかったのに。しかし、それもまたカフカの魅力(あるいは彼の仕掛けた謎)か。
『城』の池内紀訳が「新訳」として出た時には、前田敬作訳と並べて読んだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレカフカの変身で虫と思っていたものが、甲虫だけではなく、ドイツ語から英語になって日本語になった時に、いろいろな違いがあってinsectではないということに驚かされた。妹が投げたりんごがめり込むので、芋虫かと思っていたらそうでもなかった。Ungezieferがverminか insectかで異なるのならわざとぼかしていたという解釈であり、写真版が必ずしも正しいとは限らないということであった。「審判」が「訴訟」とタイトルさえことなるのであれば、何が何だかわからなくなる。これは源氏物語の校本を出した澤瀉のようなものであり、それをカフカは知っていてわざとぼかしたのかもしれないとさえ思う。