明星聖子のレビュー一覧

  • ほんとうのカフカ

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    カフカの『変身』、最初読んだ時には、ゲジゲジのようなものを連想した。グレゴール・ザムザがカ行とサ行の濁音だったからか。
    目が覚めた主人公が変身していたのはUngeziefer。過去には虫と訳されていた。原義は「有害な虫や小動物」。だから、虫、虫けら、毒虫だけでなく、ネズミなどもありえる。2015年に出た多和田葉子訳では、そのまま「ウンゲツィーファー」にしていた。英訳もinsectかverminかでもめている。人騒がせなカフカ先生、絵でも添えてくれればよかったのに。しかし、それもまたカフカの魅力(あるいは彼の仕掛けた謎)か。
    『城』の池内紀訳が「新訳」として出た時には、前田敬作訳と並べて読んだ。

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    2025年05月19日
  • ほんとうのカフカ

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    さまざまな観点が検討されてとても良い本なのだが、ザムザが変身した虫がゴキブリなのかについてはふわっと触れつつ議論を回避している印象があった(確かに、書かれていた通り私が英訳を読んだときもverminで、insectではなかった。だが、そこから虫の解釈にさらに深く踏み込む感じではなかった)。批判版に対する批判的検討が書かれているのは興味深い。

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    2024年12月25日
  • ほんとうのカフカ

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    ネタバレ

    カフカの変身で虫と思っていたものが、甲虫だけではなく、ドイツ語から英語になって日本語になった時に、いろいろな違いがあってinsectではないということに驚かされた。妹が投げたりんごがめり込むので、芋虫かと思っていたらそうでもなかった。Ungezieferがverminか insectかで異なるのならわざとぼかしていたという解釈であり、写真版が必ずしも正しいとは限らないということであった。「審判」が「訴訟」とタイトルさえことなるのであれば、何が何だかわからなくなる。これは源氏物語の校本を出した澤瀉のようなものであり、それをカフカは知っていてわざとぼかしたのかもしれないとさえ思う。

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    2025年08月10日
  • ほんとうのカフカ

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    カフカの翻訳の困難さがこれでもかというぐらい伝わってきます.謎解きをしているような面白さがあり,ただ言葉の訳だけではなく,順序や校正,編集の正解がなかなか見つからないことが分かりました.

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    2025年05月14日