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  • ほんとうのカフカ
    値引きあり
    4.0
    ザムザが「変身」したのは「虫」なのか? 『城』の冒頭でKが到着したのは「村」なのか? 『審判』という表題は『訴訟』とすべきか? カフカの作品にはいくつもの日本語訳が存在し、多くの人に親しまれてきた。だが、「虫」と訳されてきた『変身』を見ても、「虫けら」と訳したもの、原語のまま「ウンゲツィーファー」と表記しているものが登場するなど、一筋縄ではいかない。しかも、1915年に発表された『変身』は作家が生前に公表した数少ない作品の一つで、むしろ例外に該当する。代表作とされる『城』や『審判』は死後出版されたものだが、作家は確定稿を残さなかったため、ほんとうの構成も、ほんとうの順序も、ほんとうの結末も推測するしかないのが実態である。 没後100年を迎えた作家をめぐるドイツ語原文の編集事情を紹介しつつ、カフカのテクストに含まれる錯綜した問題を分かりやすく伝え、日本語訳の問題を検証する。あなたは、まだ「ほんとうのカフカ」を知らない! [本書の内容] 序 章 ほんとうの変身 「虫」ではなく「ウンゲツィーファー」?/「ウンゲツィーファー」ではなく「虫けら」?/『田舎の婚礼準備』と『変身』/“insect” ではなく “vermin”?/『メタモルフォーシス』ではなく『トランスフォーメーション』? 第一章 ほんとうの到着 「K」は村に着いたのか/書いたままのテクスト?/等価ではない翻訳/誤訳だけではない問題/手稿をめぐる誤情報/「私」の到着/うさんくさい男たち/「私」は測量技師なのか/不審な「私」/もうひとつの到着/少年か、青年か/悪魔のような息子/愛のしるし/仕掛けられた罠/ほんとうの到着 第二章 ほんとうの編集 「私」はいつ「K」になったか/電話はどこにかけたのか/出まかせの肩書き/アイデンティティの正体/「章」とは何か/矛盾する編集方針/定められた〈冒頭〉/新しい「始まり」と「終わり」/〈本〉ではなく〈函〉/批判版vs.写真版/完結した章と未完結の章/ひとつの〈いま〉と複数の〈いま〉/〈正しさ〉をめぐるジレンマ/「夢」は含まれるか 第三章 ほんとうの夢 「史的批判版」という名の写真版/編集の問題と翻訳の問題/ほんとうの「史的批判版」/編集文献学の必要性/ほんとうの底本/「オリジナル」概念の難しさ/もっとも新しい復刻本?/アカデミーへ「提出する」?/ほんとうの外見/書いたものを観察する/『審判』か『訴訟』か/ヴァリアントの提示/「幹」はあるのか?/「私」が現れて消えるとき/ほんとうの結末/白水社版の意義/丘の上の小さな家/ほんとうの夢 第四章 ほんとうの手紙 タイプライターで書かれた手紙/批判版での手紙の並び/ブロート版では読めない手紙/妹の結婚/ほんとうの手紙/フェリスか、フェリーツェか

ユーザーレビュー

  • ほんとうのカフカ

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    カフカの『変身』、最初読んだ時には、ゲジゲジのようなものを連想した。グレゴール・ザムザがカ行とサ行の濁音だったからか。
    目が覚めた主人公が変身していたのはUngeziefer。過去には虫と訳されていた。原義は「有害な虫や小動物」。だから、虫、虫けら、毒虫だけでなく、ネズミなどもありえる。2015年に出た多和田葉子訳では、そのまま「ウンゲツィーファー」にしていた。英訳もinsectかverminかでもめている。人騒がせなカフカ先生、絵でも添えてくれればよかったのに。しかし、それもまたカフカの魅力(あるいは彼の仕掛けた謎)か。
    『城』の池内紀訳が「新訳」として出た時には、前田敬作訳と並べて読んだ。

    0
    2025年05月19日
  • ほんとうのカフカ

    Posted by ブクログ

    さまざまな観点が検討されてとても良い本なのだが、ザムザが変身した虫がゴキブリなのかについてはふわっと触れつつ議論を回避している印象があった(確かに、書かれていた通り私が英訳を読んだときもverminで、insectではなかった。だが、そこから虫の解釈にさらに深く踏み込む感じではなかった)。批判版に対する批判的検討が書かれているのは興味深い。

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    2024年12月25日
  • ほんとうのカフカ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    カフカの変身で虫と思っていたものが、甲虫だけではなく、ドイツ語から英語になって日本語になった時に、いろいろな違いがあってinsectではないということに驚かされた。妹が投げたりんごがめり込むので、芋虫かと思っていたらそうでもなかった。Ungezieferがverminか insectかで異なるのならわざとぼかしていたという解釈であり、写真版が必ずしも正しいとは限らないということであった。「審判」が「訴訟」とタイトルさえことなるのであれば、何が何だかわからなくなる。これは源氏物語の校本を出した澤瀉のようなものであり、それをカフカは知っていてわざとぼかしたのかもしれないとさえ思う。

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    2025年08月10日
  • ほんとうのカフカ

    Posted by ブクログ

    カフカの翻訳の困難さがこれでもかというぐらい伝わってきます.謎解きをしているような面白さがあり,ただ言葉の訳だけではなく,順序や校正,編集の正解がなかなか見つからないことが分かりました.

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    2025年05月14日

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