待川匙のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ文章の上手さが異常。
導入部分は平易に思えるが、徐々に難解になり、後半は何がなんだかわからなくなる。
にもかかわらず、文章の上手さから言葉は確実に読み手の脳に注ぎ込まれ、脳が強制駆動させられる感じ。
テーマはなにか? そもそもテーマはあるのか?
一度、読んだだけではわかりませんでした。
読み手により景色が変わる騙し絵的な作品なのかもしれない。
ですが、以下のあたりに作者の思いがあるように感じます。
“子供という殻が破られて、すべてがすっかり変質し、ほとんどべつのものになることで大人になるのではなくて、子供時代というのは、琥珀のなかに閉じこめられた昆虫のように、ずっとそのままのかたちでそこにあって、その外側をべつのものが包んでいるだけなんだ”
その、閉じ込められ忘れ去られた子供時代の記憶を徐々に引き出していくわけですが…。
カフカの小説のように真実がグラグラ揺らぐので、論理的に理解することが困難。真偽不明のパーツから無理矢理全体像を描くような読書体験をしたい人にオススメです。
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Posted by ブクログ
ネタバレ職場の店長が捕まり、店が休業してしまうことをトリガーに主人公の幼いころの過去を想起していく展開になるんだけど、主人公の主観とキイちゃんの言葉がどんどん食い違っていって、「ちがう」「記憶を間違えている」と問答するんだけど、もしかしたらキイちゃんは幼い頃の主人公の中にいたもう1人の自分なのでは?と思った。
子供って“ここでこんなことしちゃったらどうなるのかな”って善悪の判断もつかないまま純粋で危うい行動をしてしまう生き物だと思うんだけど、その発想をしてしまうキイちゃんって人格が主人公の中にいたのでは?。
『大人になるということは、琥珀の中に閉じ込められた昆虫のように、ずっとそのままのかたちでそこにあって、その外側を別のものが包んでいるだけなんだ、』という言葉が出てくるけど、中学生になっても主人公の中の昆虫を琥珀の中に閉じ込めることはできなくて、問題な行動や思考をしてしまっていたんだと思う。それに別れを告げるために、はたまた昆虫の要素が大きすぎたためにキイちゃんの頭にスコップを突き立てた。(『地表を掘る仕草を、人間の頭部の皮膚に適用して、骨があった、と嬉しそうに叫ぶことが面白い冗談になると本気で思っていた』とあるから後者の可能性が高いが)。それを機に主人公はキイちゃんを殺し、大人になることができたけれど、勤務先の店長が無差別殺人を起こすという、店長の中の昆虫が琥珀から出てきたみたいな、ショッキングな出来事をトリガーに、主人公が精神を取り戻すために伏す夢の中で再びキイちゃんに出会っているんだと思う。
全体的に、本質的なことを言っていそうで、私に伝わるメッセージは半分程度。でもその余白がある分、自分自身の子供時代の数分間の複雑な記憶(昆虫)がオブラートの中で蠢いている感覚がした。 -
Posted by ブクログ
もしかするとこれは全て「わたし」による妄想なのかもしれない、と考えた。「わたし」は実際にはアルバイトもしていないし、田舎にも帰っていないのではないか。
なにかトラウマ的な出来事があって、それを整理するために「わたし」と「キィちゃん」は偏執的に出来事を連想しているようにも思える。どれも正しくて、どれも正しくない。互いに否定しあって打ち消される。
総じて、「理解しよう」と構えながら読むと「何を理解すれば良いか」という主観になってしまうので、読み応えに差が出てしまうのも頷ける。全ては「どのように受け取るか、感じるか」で「理解しなければならないもの」だとは思わなかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ想定枚数157枚
主人公は地元のあなた=キィちゃんの墓参りに向かい、そこで昔のことを思い出していく。
途中から地の文で私とキッちゃんの「そうだったよね」「ちがう」という会話形式で記憶のすれ違いを見せ始め、キィちゃんの死が私によるもの、いや違う、となって結局どちらなのだろうと思ったけれど読み終えて思うのはサイコパスな私の話なのではないか?
本線と関係のない、私を「加害者加害者」と呼ぶ祖母や雷に打たれ突然消えた父や冷たい母、バイト先の店主の殺人事件?すら主人公によるそういった性格の背景のように思えた。最後キッちゃんの骨を掘って自分の加害性を確かめようとするところも。結局はどうとも読める。
光の底で白く眠る
勤めていた土産物屋が店主の犯罪で休業になり、昔死んだ同級生の墓参りに行くことにした。その前に祖母の家に寄る。幼い頃壊し癖のあった主人公のことを、祖母は加害者加害者と呼んだ。母は再婚し住所も知らない。
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Posted by ブクログ
ネタバレ頭の中に広がる景色は白っぽく柔らかい光に終始包まれているのに、不穏さが流れ続ける小説。
前触れなく「おれ」として語りかけてくるキイちゃんがこの作品のびっくりポイントだけど、個人的にいちばん怖かったのはバイト先の店主の無差別殺人。直前に退職金(?)渡してくるのも怖い…ネットニュースで知るのも怖い…そりゃ寝逃げするしかない。
キイちゃんと主人公の主張は段々と食い違っていくが、キイちゃん側を信じれば、主人公は幼い頃、暴力的で、それを抑えられなかった子供であったことが分かる。(いじめを受けたり家庭も良好ではなさそうだから、色んな理由はあると思う)
主人公自身のエピソードを読んでも、たぶんそっちが本当だったんじゃないかなと感じる。
そもそもキイちゃんとの会話は主人公の自己内省というか、脳内会議というか。蓋をしていた記憶を掘り返す作業なのかなあ。子供時代の後悔(キイちゃんを結果的に殺した?こと)、その矛盾を正当化したい気持ちと、事実を思い出そうとする大人の自分と、自己弁護でもなんでもなく、何が真実だったのかもう分からなくなっている現在と。カオス。
ラスト、それまで比較的穏やかな語り口(?)だった主人公が、「わたしはそれをしたい」と、衝動的だった子供時代のテンションに戻る。小説は終わるがそのあと本当に墓を掘り返しまくったんじゃないかと思わせる。不穏が爆発寸前のところでブツっと終わる。
やっぱり文学はよく分からないや。エンタメ作品最高。しかし「楽しい」の範囲を広げていきたいので、興味を持った本はこれからも読んでいきたい!
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Posted by ブクログ
ネタバレ初めて読んだ文藝賞受賞作品。
静謐な空気感と精神の異常性がすごくアンバランスなんだけどそれが流れるような文章で入ってくるから、読んでてフラフラしてくる。
まるでめちゃくちゃゆっくり進むジェットコースターに乗ってるような感じというか、今まで体験したことのない不安感を覚えた。
普段よく読むミステリは、エンタメとして面白ければそれで良しだったけど、純文学系は読み終えても「つまりどういうこと??」ってなって感想の出力ができないのであまり読んでこなかったけどこの本は最初から最後まで面白くて読めた。
でもなぜこの本を面白いと感じるのかさっぱりわからないから、感想を言語化して整理せざるを得ない、そんな小説だった。