私は特撮が好きである。
そして、手帳文具万年筆さらにインクが好きである。
カエルが好きである。
しかし、いずれも浅瀬の住人に過ぎない。
あらゆるマニアックな世界は沼であろう。
沼の住人たちは突き抜けている。
スーツアクターさんが第○話だけ違う、とか、この子役は○○の○話に出ていた、とか、全部知っている。
映画の小物でちらっと写っただけのペンを型番まで言えたりする。
ちらっと写っただけのカエルの種類を同定する。
私は何事にも食らいついて離さないほどの情熱が持てず、常に中途半端である。
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著者は高校生でコーヒーに出会い、そこからコーヒーひと筋のギークである。とにかくすごいのだ。
コーヒーにまつわるあらゆることを知っていて、即座に頭の引き出しから取り出す。
嫌味がないのは、常に直球!という雰囲気を全身から醸し出しているからだと思うのだが(YouTubeを見る限りそんな印象だ)、若いコーヒーマンには珍しく?コモディティや古き良き昭和喫茶文化などにも造詣が深く、積極的に発信しているのもバランス感覚を感じる。
本書は著者がコーヒーと出会ったところから始まり、さまざまな国や場所でさまざまな人と出会い、さまざまな経験をしてきた冒険記のような一冊だ。
コーヒーにおいて"正解"があるのかどうかという根本的な問いにはっきりとした答えは提示されない(と、私は思った)が、常に真摯にコーヒーと向き合い続ける著者の姿勢に感服する。
非常に本が好きな方だそうで、それだけにややレトリックが過剰で大仰なボキャブラリが多用されているがこれも著者の味と言えるのかもしれない(私はちょっと文体は苦手だった。コーヒーも文章もスッキリシンプル、後味が少しじわっと来るくらいが好き)。
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私はコーヒーが好きである。
最近は新しいグラインダーを入手し、カッピングの真似ごとなんかして遊んでみたりしている。
コーヒー動画をいっぱい見て、本を読んで、産地のことや世界における問題(気候変動のこと、産地の社会情勢のこと、など)にも関心を持って見ている。
が、やはり沼に入り込むことはできていない。
くるぶし1cmの浅さからようやくふくらはぎの下の方が浸かるようになったくらいだ。このまま一生浅瀬の住人で終わる気がする。
ところで「浸かる」といえばあれですね。
そろそろハリオスイッチが欲しいお年頃になりました。
おあとがよろしいようで。