井出智博のレビュー一覧
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ちょうど関心のあるテーマだったこともあって、興味深く読むことができた。序盤の図を見れば、もはやカウンセリングは、面接室内のやり取りだけでどうにかなるものでもないときがあるということがよくわかる。臨床家は、目の前の来談者の困り事や病理を個人に内在化するのではなく、社会という広い文脈の中で捉える視点を養う必要があるだろう。
そのための教育や養成プログラムの章は参考になることが多かった。思い返せば、自分が受けた頃の専門家養成カリキュラムでは、生物-心理-社会モデルのうち、生物と社会の側面に関する内容はほぼ扱われておらず、今になってようやく自分で学んでいる最中である。今後、アドボカシーの実践者としての -
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心理支援領域で社会にアプローチする本書のような物が出版されるのは隔世の感がある。特に我が国の心理臨床の状況ではなおさらである。20世紀の心理療法のパラダイムシフトでは第1勢力として精神分析・力動療法、第2勢力として行動療法と認知行動療法、第3勢力として実存主義的心理学と人間性心理学、第4勢力として多文化カウンセリング、そして2000年代に体系化され第5勢力と呼ばれるようになった社会正義アプローチとのことで、北米では学会の教育や倫理規定にも影響を及ぼすようになっているとのことである。社会正義アプローチはsocial justiceの訳語だが、正義を入れることの編者の葛藤もあったようだが、編者のカ
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【目次】
第Ⅰ部 イントロダクション
第1章 社会正義カウンセリング概要:その歴史と特徴
1.心理に政治を持ち込むな?
:社会責任に応える心理学の歩み
2.治療同盟における「社会的背景」という死角
3.第5勢力としての社会正義アプローチの興りと特徴
4.人権に基づくアプローチと心理支援における人権教育
5.社会不正義への加担を自己監視する批判心理学という視点
6.おわりに
第2章 社会正義アプローチにおけるコンピテンシー
1.社会正義とは
2.心理支援者の役割の拡大
3.社会正義と倫理
4.国内における社会正義
5.コア・コンピテンシー
6.アドボカシー・コンピテンシー
7.多文化