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個人の問題を自己責任とする傾向・論調への反省から、今最も注目を集める社会正義(ソーシャル・ジャスティス)。これは、その人の抱える困難を文化的・社会的・経済的な文脈で捉え、社会の側に変化を求める考え方である。欧米では盛んなものの、人種差別や性差別に関わるものが多い。そこで本書は、日本風土にマッチした心理支援の実践モデルを紹介することで、学派や理論的背景を超えたこれからの心理臨床のあり方を探り、新たなアプローチを提言する。
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Posted by ブクログ
ちょうど関心のあるテーマだったこともあって、興味深く読むことができた。序盤の図を見れば、もはやカウンセリングは、面接室内のやり取りだけでどうにかなるものでもないときがあるということがよくわかる。臨床家は、目の前の来談者の困り事や病理を個人に内在化するのではなく、社会という広い文脈の中で捉える視点を養...続きを読むう必要があるだろう。 そのための教育や養成プログラムの章は参考になることが多かった。思い返せば、自分が受けた頃の専門家養成カリキュラムでは、生物-心理-社会モデルのうち、生物と社会の側面に関する内容はほぼ扱われておらず、今になってようやく自分で学んでいる最中である。今後、アドボカシーの実践者としての臨床家が多く養成されることを期待したい。 セルフケアを求める組織に関するテーマも、本書の内容理解を促進する上で印象的な内容であった。
心理支援領域で社会にアプローチする本書のような物が出版されるのは隔世の感がある。特に我が国の心理臨床の状況ではなおさらである。20世紀の心理療法のパラダイムシフトでは第1勢力として精神分析・力動療法、第2勢力として行動療法と認知行動療法、第3勢力として実存主義的心理学と人間性心理学、第4勢力として多...続きを読む文化カウンセリング、そして2000年代に体系化され第5勢力と呼ばれるようになった社会正義アプローチとのことで、北米では学会の教育や倫理規定にも影響を及ぼすようになっているとのことである。社会正義アプローチはsocial justiceの訳語だが、正義を入れることの編者の葛藤もあったようだが、編者のカナダで教員をされている和田氏の「社会正義アプローチとは、ためらい、迷い、疑心悪鬼になりながら、自身の内面や時代精神を凝視し、他者の声に耳を傾け、既存の知識の前提や限界の挑戦しながら模索するものだと考える」という言葉に凝集されている。本書では何回か医学医療ではSDHの概念が広がっているとの言説があったが、残念ながら日本では伊大知部にとどまるのが現状である。おそらく心理領域でのSDHと考えてもいいのだろうが、本書をきっかけに教育や現場でこの概念が広がることが、今後の多様性が広がる我が国の心理臨床の質の向上につながることを期待したい。
【目次】 第Ⅰ部 イントロダクション 第1章 社会正義カウンセリング概要:その歴史と特徴 1.心理に政治を持ち込むな? :社会責任に応える心理学の歩み 2.治療同盟における「社会的背景」という死角 3.第5勢力としての社会正義アプローチの興りと特徴 4.人権に基づくアプローチと心理支援にお...続きを読むける人権教育 5.社会不正義への加担を自己監視する批判心理学という視点 6.おわりに 第2章 社会正義アプローチにおけるコンピテンシー 1.社会正義とは 2.心理支援者の役割の拡大 3.社会正義と倫理 4.国内における社会正義 5.コア・コンピテンシー 6.アドボカシー・コンピテンシー 7.多文化と社会正義カウンセリング・コンピテンシー(MSJCC) 第Ⅱ部 多様な学派からのアプローチ 第3章 心理支援におけるフェミニスト・アプローチ 1.はじめに 2.北米におけるフェミニスト・セラピー 3.日本におけるフェミニストカウンセリング 4.心理支援におけるフェミニスト・アプローチ 5.フェミニスト・アプローチによる心理支援の例 6.心理療法はフェミニズムと両立しうるのか 7.おわりに 第4章 コミュニティ心理学と社会正義 1.コミュニティ心理学における重要概念 2.コミュニティ心理学における「社会正義」 3.コミュニティ心理学実践例としての大学における障害学生支援:社会正義の観点に注目して 4.おわりに 第5章 ナラティヴ・アプローチと社会正義:「当たり前」に抗う,その可能性を求めて 1.はじめに:ナラティヴ・アプローチと「支配的なディスコース」 2.きっかけ:精神科リワークでの臨床経験から 3.職場サイドのリスクとみなされる 4.心理臨床の世界が抱えてきた課題 5.「休む」ことにまつわる支配的なディスコース 6.倫理的課題と社会正義アプローチ 7.ナラティヴ・アプローチの視点から取り組む社会正義 8.社会構成主義の叡智を頼りに 9.おわりに 第6章 心理力動的心理療法における社会正義アプローチ 1.はじめに 2.心理力動的心理療法の落とし穴 3.心理力動的心理療法における社会正義アプローチ 4.セラピストの姿勢 5.心理支援の実際から 6.日本の心理療法の被植民性 第7章 パーソンセンタード・アプローチと社会正義 1.パーソンセンタード・アプローチにおける社会正義をめぐる議論 2.社会正義実現に向けたPCAの可能性 第8章 認知行動療法における社会正義アプローチ 1.はじめに:心理学と社会正義 2.“王道” としてのCBT 3.改めて,CBTとは何か 4.CBTと多文化共生 5.CBTにおける社会正義の実践例 6.おわりに 第Ⅲ部 トピックス 第9章 新自由主義と現代人の心 1.社会や政治と個人の心 2.資本主義社会とそれに成立させる個人のメンタリティ 3.新自由主義が作り出す心理 4.心理支援者に対する示唆 第10章 新植民地主義と心理臨床における文化盗用:マインドフルネスを例に 1.はじめに 2.マクドナルド化したマインドフルネス,表出するマインドフルネス批判 3.マインドフルネスは文化盗用か 4.“Naturalize” されるマインドフルネス 5.おわりにかえて 第11章 スティグマ 1.スティグマとは何か 2.スティグマが及ぼす影響 3.スティグマ問題への対応 第12章 マイクロアグレッション 1.マイクロアグレッションの定義 2.マイクロアグレッションの研究 3.マイクロアグレッション理論の特徴 4.心理支援の場において 5.マイクロアグレッションの具体例 第13章 インターセクショナリティ 1.はじめに 2.インターセクショナリティの起源とその理論 3.認識論としてのインターセクショナリティと心理研究 4.心理臨床におけるインターセクショナリティと社会正義 5.誤用・悪用への注意喚起:「複数のアイデンティティ」で終わらせないインターセクショナリティ 6.インターセクショナリティの日本での展望 7.おわりに 第Ⅳ部 トレーニング 第14章 カナダの大学院プログラムから:カルガリー大学カウンセリング心理学科を例に 1.カルガリー大学カウンセリング心理学科の概要と取り組み 2.実践例「アドボカシー・ポートフォーリオ」 3.実践例「実習受け入れ機関の社会正義分析」 4.実践例「MSJCCを取り入れた事例発表・SVの実践」 5.おわりにかえて:特有の困難と課題 第15章 公認心理師・臨床心理士養成課程における授業実践 1.社会正義を実現するための心理支援者のコンピテンシーとその教育・訓練 2.社会正義を実現するための心理支援者のコンピテンシーの養成を目指した心理支援者養成課程における教育実践 3.教育実践に関する報告の内容 4.まとめ
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心理支援における社会正義アプローチ不公正の維持装置とならないために
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和田香織
杉原保史
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