山本謙三のレビュー一覧
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本書を読んで、異次元緩和の悪影響で日銀が詰まないようにすることがいかに難しいかよくわかった。逆に言えば、日銀が詰むのはいつかわからないまでも、日銀が詰む日が来ることを、我々国民は覚悟して備えなくてはいけなくなってしまったのだと理解した。
本書を読むと、異次元緩和は、国民をデフレマインドから脱却させ、インフレマインドにパラダイムシフトさせるために日銀が行ったデスパレートなパフォーマンスに思える。しかも、そこまでの大博打の前後で、GDPには大した変化がないという。ハイリスク、ネガティヴリターンではないか。
著者は首尾一貫して「財政ファイナンスに酷似した国債買い入れ」という言い回しを使っている。 -
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ネタバレ元日銀理事で金融政策、金融・決済システムなどを担ってきた著者による「異次元緩和」批判の書。「異次元緩和」は、物価、実質GNP成長率にはほとんど影響を与えず、雇用は増加したものの非正規雇用の増加によるもので実質賃金は低下と生かはごくわずかな一方、「財政規律の弛緩」「市場機能の低下」「金融システムの弱体化」など深刻な副作用をもたらしたとデータをもとに論じている。
著者にとっては36年間勤務した日銀に対する思いは強いと思う(本書では黒田元総裁個人に対する直接的な批判はないが財務省から来て日銀をめちゃめちゃにしたという思いがあるのでは)。
著者は「通貨の信認の確保」こそが中央銀行の責務であり、「2%イ -
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当事者ではないにしても関係者もしくは関係する組織の人に本当の意味でニュートラルの立場というのは難しいのだと思う。暴露本ではないが、書かずにはいられなかったというのがあるようにも思う。ニュートラルのフリをしつつ自分の主張を前面に出す場合と自分の主張はしたいのだけれど可能な限りニュートラル目指すというパターンがある様にも思うが、本書はその中間なのかなとも思う。
この10年の日銀のいわゆる異次元緩和はアベノミクスの成果の陰に隠れて同じく成果があったと評価されることが多いのかも知れない。成果があったと思っているのは私の勘違いかも知れない。実感が感じられないのに要素の数値では成果があったと言えることを、 -
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著者は2008年日銀理事として金融機構局、決済機構局の担当としてリーマンショックや東日本大震災後の金融・決済システムの安定に尽力した(P267~273)。
2012年(速水総裁時代)に退職しているので白川・黒田総裁時代の金融政策には無関係であることをまえがきで記している(P12~13)。
本書は黒田日銀の異次元緩和について元日銀理事の著者の分析により総括されたものとしても大変興味深い。
著者の考える中央銀行の目的(=存在理由)を単なる物価の安定ではなく、日銀法を引用しながら「通貨の信任確保」つまり➀銀行券の円滑な発行と流通②決済システムの安全な運行③信用秩序の維持(金融システムの健全性確保)④ -
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私は、日銀の異次元緩和にそのスタートから関心を持ち、その推移を見てきました。経済学部を卒業した者として、「金融のできることは限られている」と思い、異次元緩和には違和感を持っていました(この辺りのことは西野智彦著『ドキュメント 異次元緩和』の感想に書いてあります)。
異次元緩和スタート時点で、これに疑問を呈すると(リフレ派から)「お前は馬鹿か」と言われたものです。しかし、本書を読むことで、異次元緩和が後先を考えずに続けられた政策で、将来に禍根を残すものであったことがわかります。どう言い繕おうと、日銀の国債買い入れは財政ファイナンスでした。最近発表された日銀のレビューからもそうであったことが読み -
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アベノミクスの3本の矢、金融政策、財政政策、成長戦略、、、
アベクロで実現させた金融政策が異次元の金融緩和。
それは実質、禁じ手といわれる財政ファイナンスを実行することだった。
2%の物価上昇を目指しながら、日本経済はデフレから立ち直ることはできず。
残る2つの矢、財政政策走りつぼみ、成長戦略は影も形もなかった。
規制緩和が起爆剤と言われていたが、一向に進まなかった。
第一次安倍政権はガチガチの官僚政治を打破する、という高い目標があり、
私も応援したものだが、官僚の攻撃に一敗地にまみれた安部さん。
ここで悪い学習をしたか、創価学会だけでなく、統一教会とも手を組み、
裏金でも何でも使って、とに -
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リフレ派=世の中に出回る資金量を拡大することで人々のインフレ心理を高め、緩やかな物価上昇の実現を通じて景気の拡大を図ろうとする人々。
量的緩和政策の危うさ
①実体経済への効果に疑問があるうえに、(社債等の)クレジット市場や資産価格、流動性に歪みももたらしている。
②デフレスパイラルに陥らない限りは低インフレを過度に心配すべきでない。
③中央銀行は、金融システムの安定をもっと重視すべき。量的緩和が資産価格の高騰やレバレッジ拡大をもたらし、金融システムの不安定を引き起こす可能性を高めている。
銀行券ルール(日銀が保有する長期国債の残高は、銀行券発行残高を上限とする)があるため異次元緩和のリ -
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元日銀職員が、アベノミクス下の「異次元の緩和」を酷評する。
そうした視点はあっていいと思う。
だけど何というのか、経済の指標が良くなったところは「緩和」のおかげではなく、うまくいかなかったところは「緩和」のせいという論調はどうかね。
いわゆる三本の矢、異次元の緩和はそのうちの一本に過ぎない。
財政規律が必要ないとは言わない。もちろん、放漫になって国際社会の中でどうみられるかっていう観点はとても大切なんだが、じゃあ、今どう見られてます?
日銀が自分たちの美意識で全く経済高揚に協力もしなかった過去の結果がどうでした。
異次元の緩和で、市場がどう反応しました?海外も含めて。
自殺者数ってどうな -
匿名
購入済みこの本を読んで思ったのは、日本がルビコン川を渡るつもりが、踏み入れてはいけない泥沼に入ってしまったという印象を受ける。
「資産の健全性」や「財政ファイナンスの禁止」等、本来は守らないといけないものを、経済復興のため捨てる決断をした結果、日本経済が不安定で落ちやすいものなってしまった。
その経過や結果を書きつつ、異次元緩和がルビコン川を渡るというカッコつけたものではなく、日本の今後を考えず、踏み入れてはいけない泥沼に入っていた。抜けるためにも多くの困難が伴う、そう感じざる得ない。 -
Posted by ブクログ
新卒で日本銀行に36年間勤めた人が書いたので、日銀の役割についてはかなり詳しい。また黒田東彦の異次元緩和が開始する前に日銀を退職しているので、異次元緩和について客観的に書ける。異次元緩和の罪というのは、とにかく日銀に国債を買いまくらせたことだ。11年間で457兆円も買増ししたので、この間の新規国債発行額480兆円の95%に当たるというのですから、日銀による財政ファイナンスであったことは明らかです。
問題は異次元緩和を終了させても、金融引き締めも日銀の保有国債の放出もできないことです。中央銀行の最も重要な役割は通貨の信任の確保なのですが、中央銀行が長期国債漬けなのですから、取りうる金融政策の