ユーリ・ツェーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2009年ドイツ発刊のSF小説の翻訳本。
コロナ禍で部分的に表面化した問題点として、社会は年々健康至上主義的に変化している。その究極的な仕組みの中で“健康”とは市民の権利ではなく、人間としての義務にすり替わり、健康違反者は犯罪者として扱われる。
医者・医療が時に警察や裁判官のように描かれるのは現実世界でも存在するシーンでもあり、“医療の警察化”作品中では皮肉的に描いているように見えた。
また、宗教を失って、神の地位を健康と科学が占めた世界(現代が益々それに近付いているが)では、健康や科学に反したり、説明できない事項は非理性人として社会から隔離される。
「私の身体」は“私のもの”なのか“国家 -
Posted by ブクログ
コロナ禍のあの息苦しさ。この本はそれを思いださせる。
舞台は「心身が健康であることが義務」の世界。国家が市民を監視、管理する。街は無菌状態。みなそれを疑問に思わず生きている。
ある事件が起こり、男が投獄、無実を訴えながら自死する。弟の無実を信じる姉が、その判断を下した社会システムに疑問を持ったがゆえ、思わぬ展開に巻き込まれる。
いったん社会からレッテルが貼られると、一挙手一投足すべて悪意ある「ストーリー」に沿って解釈される恐怖。(「誰とも」が「ダレトモ」になる場面はぞっとした!)
でも主人公である姉は信じる道を進む。強い。
コロナ禍を彷彿させるが、あとがきによると2009年刊行。コロ