国税通則法は納税義務の成立や申告納税の方法など手続きに関することが多くて苦手意識があることから、本書を通じて、国税通則法の概要を理解することができた。
国税通則法は国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定め、税法の体系的な構成を整備し、かつ、国税に関する法律関係を明確にするとともに、税務行政の公正な運営を図り、もって国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資することを目的とする。
国税を納める義務(納税義務)に関する法律関係は、納税者の利害に直接影響するものだ。したがって、納税義務はいつ成立し、いかなる行為によって具体的に確定するか、課税と徴収はいつからいつまでの間にできるか、税務署員による質問検査権をどの程度まで認めるかなど、国民にとって極めて重要な基本的事項を明らかにすることが必要だ。そのため、国税通則法は、国民の権利利益にも配慮しつつ、これらの基本的な事項について規定するものであることを明確にしているのだ。
なお、「国税に関する基本的・共通的な事項」が、具体的にどのようなものをいうのかについて、同法でははっきり書いていない。しかし、国税通則法の制定経緯等をみてみると、少なくとも次のような事項はこれに含まれると考えるべきであろう。
イ 納税義務の確定時期
ロ いったん確定した納税義務の履行を延長するための手続
ハ 各税法間の規定の重複を避け、税法全体を簡明化
税法は、国民の多くに直接関係してくる重要な法律だ。したがって、その規定ぶりも、納税者の理解が容易に得られるような表現ぶり及び内容のものにする必要がある。そのため、我が国では、納税義務者、課税標準、税率など、課税の実体に関する規定は各税法において規定し、各税法の手続に関する事項や、共通的な事項については、国税通則法に規定して税法全体の構成を体系的に整えるという形が採用されている 。
国税に関する基本的な事項と共通的な事項を国税通則法に統一して規定することにより、納税義務の適正かつ円滑な履行と税務行政の公正かつ能率的な運営が可能になるのだ。