原作はピケティ氏。表紙の絵がキャピタリズムの基本を象徴している。1980年頃まで政策論争の構造は階級闘争的なもので、左派は労働者、右派は資本家が支持していた。しかし、それ以降徐々に左派は高学歴の管理職や知的職業の人達からの支持を集めるようになった。この逆転現象は欧米のあらゆる民主主義国(日本は入っていないようだ)の投票行動に見られるという。確かにトランプ派やルペン派の勢いを見ると、右派は旧来型の資本家と、逆に現状の収入等に不満を持つ層からの人気が有るように見える。この本でも、庶民階級や中流階級の人々の思っている「自分達は見捨てられている」という気持ちを利用して、反移民とナショナリズムのイデオロギーを展開している。同様の状況はインド・ブラジル・ポーランドなどにも広がっている。
レーガンの行った大減税の理論はトリクルダウンによる景気拡大と税収増を見込んだ。しかし結果として景気は拡大せず財政赤字は急速に拡大し、社会保険料は削減されアメリカは競争力を失っていったとの事。しかし日本はつい最近アベノミクスという名で猿真似政策を行い、見事に米国と同様の結果(財政赤字の拡大と国際競争力の低下)をもたらしてくれた。
ドイツでは従業員代表が企業の取締役会の議決権の半数を所有している。ドイツ企業の先進性は常々言われているが、そんなことまでしているのかと驚いた。まぁこれが最終的に正しかったのか結末はまだ判らないが。
著者の提案として6つ挙げられている。1.資本の社会所有2.資本の一時所有3.一つの社会連邦主義ヨーロッパ4.民主的平等性バウチャー5.個人累進炭素税6.教育と職業訓練のための個人資本。いずれも相当進歩的考えが国全体に浸透していないと実行は困難だろう。ドイツですら極右政党が躍進している世界なのだ。日本では何十年後に意識付けできるだろうか。