脳から情報を収集する、脳に直接働きかける、脳を操作する、ということが現実になりつつあるなかで、「認知的自由(記憶、内言、心象など)を新しい人権として確立する必要を主張している。その主張には賛同するが、世の中の動きは鈍いように思う。また、中国などではすでに 実際に国家がニューロテクノロジーを使っているのではないかとも思う。ニューロテクノロジーのガバナンスを考えるのに良い本。
【原題】The Battle for Your Brain : Defending the Rishts to Think Freely in the Age of Neurotechnology
【目次】
はじめに
第Ⅰ部 脳のトラッキング
第1章 最後の砦
最後の砦
ビッグテック、脳データ解読に総力をあげる
「生の」脳データは一人ひとりが固有のパターンを有する
私たちは知らぬ間に脳データを他者と共有するか
脳波データを最新の状態に更新する
脳データも商品化されている
脳データは機微性も管理も一律でない
共有することの価値
精神的プライバシーの権利
第2章 職場における脳の監視
職場における監視の広まり
職場における疲労度トラッキング
注意力が低い脳への対処
従業員に対する最新の「福利厚生」――脳の健康(ウェルネス)
職場における新たな規範の確立
第3章 国家による脳の監視
政府は脳研究に何を求めているか
忘れ去られていた思想の自由の権利
脳監視を可能にする「パスソート」
脳監視の萎縮効果
思想犯罪の思考実験
殺人事件の捜査で脳を取り調べる
自分の思想を明かさない権利
第4章 汝自身を知れ
瞑想からアルツハイマー病まで
やさしい噓
知るべきか、知らざるべきか
変化を阻む逆風
小さな一歩を踏み出すたびに大きく一歩後退する
ヘルス・リテラシーを武器にする
汝自身を知る権利
第Ⅱ部 脳のハッキング
第5章 脳を活性化する
バーシティ・ブルース作戦
大学における認知力の強化(コグニティブ・エンハンスメント)
それは本当に不正行為か?
スポーツにおける不正行為の事例
スポーツにおいて運動能力強化薬の使用がなぜ不正とされるのか
知的ゲーム
日常生活における健康を理由にした規制
エンハンスメントを強制する圧力がかからないか
エンハンサーの使用を秘匿しない義務はあるか
第6章 脳にブレーキをかける
私たちはしょっちゅう脳にブレーキをかけている
自己決定の原理
脳に直接介入する
脳や精神的経験にかんする自己決定権
第7章 精神を操作する
脳へのマーケティング
脳を説得するか、依存させるか
脳の直感的思考(ヒューリスティクス)を利用する
どのような精神の操作が許されないのか、いつ許されないのか
意識ある脳を迂回する
第8章 ワイルダービースト
MKウルトラ計画とマインドコントロール
現代の脳戦争
正気を失う
自己決定と選択能力
第9章 人間を超えて
人類2.0
無限の精神
記憶を記録・再生する
不死の精神
人間の感覚を超えて
人間のコミュニケーションの拡張
人間であることの苦しみの終わり?
自分の意志通りに世界を変える
今後取るべき道
第10章 認知的自由について
謝辞
原注
索引