退屈な日常がほんの少しきらめくような、世界を3ミリ面白くする事業をつくるべくホテルプロデューサーとして【ホテル×クリエイティブ×テック】の3つの領域を横断し多くのホテルを手掛けている著者の仕事術。仕事術というより思考法ですかね。
仕事をしていくうえで立ち塞がる壁。そんな課題を軽やかに飛び越えることができる思考法を「クリエイティブジャンプ」とし、その方法を伝授してくれる本です。
クリエイティブジャンプは5つの要素で構成されています
①本質をディグる(深掘りする)
既存の概念にとらわれず、自分たちの持つアセット(資産・資源)の本質を掘り下げ、新たな価値へと再定義する。
②空気感を言語化する
時代や社会、土地の「空気感」を敏感に察知し、言葉で表現する。
③インサイトを深掘りする
顧客の無意識の欲求や行動の背景にある「なぜ?」を徹底的に観察・分析する。
④異質なものとマッシュアップする
一見関係のない要素を掛け合わせることで、常識を超えたアイデアを生み出す。
⑤誘い文句をデザインする
UGC(ユーザー生成コンテンツ)が自然に生まれる仕掛けを設計し、顧客が自発的に伝えたくなる「キラーフレーズ」を用意する
特に⑤「誘い文句をデザインする」は、自分が発信するのではなく、お客さんや周囲の人々が「このホテル、こんな素敵な体験ができて…」と自然に語りたくなる仕組みづくりがポイントです。高品質であることは前提として、「どう良いのか」ではなく「どう他と違うのか」を、顧客自身が生き生きと語れるような体験を設計することが重要だと著者は説きます。
toC向けサービスでは、割引やクーポン、インフルエンサーによるSNS拡散が定番化していますが、消費者はすでにそれらに飽き飽きし、「胡散臭い」と感じる傾向も強まっています。そのため、身近な人からの口コミや、自分が所属する「界隈」からのリアルな評価が非常に有効であることも納得できます。
本書は著者が手がけたホテルの紹介がされていて、その企画内容も読み物としてとても楽しめると思います。紹介されたホテルをWEB検索で追ってみると、すでに終了したサービスもあり、事業の厳しさも垣間見れますが、なかなか面白い本でした。