ヤン・ポトツキのレビュー一覧
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前年、岩波文庫から出ているのを読んだ。
その解説において、「サラゴサ手稿」には複数の異なるヴァージョンが存在している、とされていた。
この工藤幸雄による邦訳は、その「異なるヴァージョン」のひとつ、ということになる。
岩波文庫版の方の記憶はそれほど鮮明ではなく、また細かく比較して読むような手間を(今のところ)かけられていないが、違っているな、という点はいくつかあった。たとえば、この創元ライブラリ版で少し登場した「さまよえるユダヤ人」やそれにまつわる部分はまるっきり覚えがなく、同じ箇所を見比べてみるとたしかに、岩波文庫版からは、その部分がまるっと抜け落ちていた。
あるいは、数学者ってこんな早 -
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紙に書かれていた外国語の手記を口頭で翻訳してもらったものを口述筆記したという設定の物語。さらにその中の登場人物が物語を語り、その物語の中の登場人物も物語を語り始める・・・
すごい入れ子構造の物語で、いまどの階層を読んでいるのか見失うことが多々ある。深い階層の物語が意外に長いので、最上位階層ではそれほど話が進んでいなかったりする。
千夜一夜物語のような枠物語の一種だが、一人の語り手がたくさんの物語を語る線形構造ではなく、たくさんの語り手による物語が複雑に絡み合っている。
この複雑な構造の物語を18世紀に書いたポトツキ氏は本当にすごい。
ここまで約400ページ読んで全体の3分の1。読むのは少し疲れ -
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【第五デカメロン】(41日目〜50日目)
読書会に参加しました。皆様ありがとうございました。
総括。
この下巻の巻末に、誰が何について話しているかの「通覧図」があったーー。上巻、中巻一生懸命読み取ってたよ(笑)
読書とは「本を読む」行為だが、この本は(上巻で書いてあったように)旅の途中で旅籠に寄って飲んで食って踊ってお話しての輪に参加しているような気持ちになるんですよ。
大きな枠組みとして、スペインのイスラム一族が守ってきた秘宝と血筋を受け継いでいく話がある。
その中に、総計30人程度の人たちがそれぞれの人生を語っていく。この一つ一つの話が大変面白い。400ページで三巻なので長いかと思い -
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騎士アルフォンソの手記の中に、彼に物語る人々の語りが入れ子入れ子で組み込まれていく物語。
語る人々は、幽霊だか人間だかわからん美女、ジプシー族長、カバラ学者、悪魔に取り憑かれた狂人、政略渦巻く上流社会に属する人々、神に見捨てられた巡礼者、人のゴシップを掘り出しのし上がる厄介者…。彼らも民族も宗教も、キリスト教徒、ユダヤ人、スペインのイスラム教徒など多岐にわたる。
出てくる人たちはなぜか美男美女ばっかり(笑)。特に男性陣は「盗賊」「ジプシー老人」と書かれているので野性的なおっさんを想像していたら「美しい男」だの「少年の頃女装して人を騙してた」とか、なんかお耽美な人たちだな 笑
彼らが語る内容も -
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読書会に申し込んだので準備中。
作者はポーランドの大貴族で1761年にピキウ(現ウクライナ)で生まれた。政治家で軍人、数々の歴史書や旅行記も書いている。
『サラゴサ手稿』の「第一デカメロン」が1805年(作者44歳)に発表されたが、その後全体手直しが行われ、1810年に作者無許可で手直し版が出版された。こちらの岩波全三巻は手直し後の1810年版による。
あとがきの訳注で「1804年版はこうなっていた」と書かれているんだがそっちの版も面白そうで気になる。
【まえがき】
フランス軍将校がたまたまサラゴサで、スペイン語で書かれた古い手書きの書物を見つけた。将校はスペイン兵に捕まったが、スペインの -
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時間があったので読んでいたら終わってしまった。ここまで広がった大風呂敷をよくぞ大団円にまで持っていけたなと思う。もっとずっと読んでいたかったのだが、残念ながら終わってしまった。でもまあ、また読めばいいか。訳した人が、何度読んでも面白いと役者解説で述べているとおり、これは再読に値する本だと思う。今回で一通り読んだので、次はもっとじっくり味わいながら読みたいと思う。
話の中で「さまよえるユダヤ人」というのを目にした気がした(見返してみてもなかなか見つからないけど)。この岩波文庫で訳されたバージョンの『サラゴサ手稿』には、もう一つのバージョンの中には含まれていたのだがオミットされた挿話があり、その -
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2/3を読み終えてしまった。まだ面白い。複数に分冊されていふ長編小説は、もし面白くなかったら損した感が大きいので、読む前は少し懸念していたが、読み終えない今のうちにすでに満足してしまっている。もちろん、下巻まで読むつもりだが、とにかく非常に面白い。
上巻では、幻覚や悪魔や魔術などが多く登場し、そういった類の小説かと思っていたのだが、この中巻では、一部悪魔が出てきはするものの、基本的にはそういったものの登場しない人間模様が展開される。
覗き見好きのブスケロスという怪人物が、いちいち憎らしくも話に豊かな展開を与えてくれてくれる。現実では絶対に知り合いたくない種の人間ではあるが、小説においてはこ -
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まったく前情報を入れないまま、邦訳が完結まで刊行されたということで読み始めた。これで1/3読んだことになる。今のところ面白い。
「第1デカメロン」とか「第2デカメロン」とか、「デカメロン」ってなんだっけ、と思って『デカメロン』を書店で軽く読んだけど、作中人物による語りによって物語が展開される形式をとっているってことなのかな?『デカメロン』も『千夜一夜物語』も読んだことがないけど、このへんと似ているらしい。
作中の語りの中で、さらにほかの話が語られることが多く、「いま誰が何の話してるんだっけ?」と混乱しがちと思いきや、(たぶん訳者の方が?)それぞれの挿話にタイトルをつけて、目次にもそれを載せ -
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前巻の後半からのジプシーの族長の話が一巻まるまる続く。
シドニア侯爵夫人の話、ソアレスの話、フラスケタの話、神に見棄てられた巡礼者の話、族長自身の恋の話。これらは族長の少年時代から青年時代の思い出でもある。彼が主人公のように思えてくる。従姉妹どこ行った。
登場人物が増えてだんだん話がこんがらがってくる。後半、別の話に出てきた人物の再登場などもあるがどんな人だったか、どんな挿話があったか思い出せず遡った。この小説は電子書籍より紙の方がめくりやすくて読むのに適しているかもしれない。
前巻は怪奇幻想の趣が強かったがこの巻は控えめ。巡礼の話くらいか。悪魔の語りはサドの登場人物を連想させた。怪人ブス