田川基成のレビュー一覧
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ネタバレ1911年蔚山生まれ、戦時期を東京で過ごし、1946年に密航で再び日本の地に渡った尹徳祚(尹致遠)とその妻・大津登志子、息子・泰玄と娘・逸己の生の軌跡をたどったドキュメンタリー。ライターの望月氏と研究者の宋惠媛氏との協働作業を通じて、戦争と国家・社会のはざまで翻弄された家族が懸命に生きた時間がたどり直される。戦後日本の入管管理政策と朝鮮人政策、戸籍制度がいかに場当たり的で矛盾に満ちたものだったか、そして、その事実に対して日本のマジョリティがいかに無知で無自覚だったかを改めて突きつけられた。そのひとびとも、マジョリティのすぐ近くで生きていたのに。
おそらくこの本と宋惠媛氏が世に送り出した尹 -
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日本の植民地支配からようやく解放された人びとが、祖国朝鮮が貧困と分断、戦乱に陥る中、生き延びるために旧宗主国への「密航」という手段を択ばなければならなかった時代に、その体験を書き残すことができたほぼ唯一の作家、伊紫遠。極貧生活の中で洗濯屋の仕事の合間を縫って小説を書き、若くして死んだ彼とその家族の人生の足どりを、ていねいにたどりなおしていく。
国籍の剥奪や戸籍の変更など、おおまかな事実としては知っていた帝国日本の崩壊(と再編)にともなうさまざまな政策制度が、個人のうえに轍を刻むときにどれほど残酷なことをするのか、本書を読みながら何度も深くため息をつかなければならなかった。表紙のイラストは、貧し -
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尹紫遠 ユンジャウォン
植民地期に12歳で渡日し、戦後に「密航」で再渡日する。日本女性と結婚。洗濯屋など仕事をしながら、作家としての活動も続けた。
彼の数少ない作品や日記,手紙,又三人の子供達のうち今存命の二人の子供達からのインタビューから浮かび上がって来る「尹紫遠」の人生を辿る“旅” 。まさしく二人の著者達と写真家は「尹紫遠」の足跡を一歩一歩訪ね歩く。
そこから彼と彼の家族が翻弄された“国家,戸籍,外国人登録。教育,労働、福祉,社会保障。”
戦後日本社会における少数者であるが故に彼らが受けた苦しみ。朝鮮の人々の民族史でもある。
日本の植民地期、戦前,戦後の朝鮮の人々の苦難については 少 -
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当たり前のことだけど、私たちは生まれたくて生まれてきたわけではない。いつ何処に生まれてくるかは、ただの偶然‥のはずなのに、なぜこの時代に生きた人々はこんなにも運命の神様に弄ばれるような人生を辿らなければならなかったのか。
立場と時期は違うけれど、私の両親もほぼこの家族と同世代。多くは語らなかったが京城での生活や帰国時に可愛がっていた犬を置いてきた話などが唐突に思い出され、読んでいる間ずっと「戦争だけはしちゃいかん。得をするのは遠くから指図する人だけ」と話す母の声が聞こえてくるようだった。今、世界で起こっている戦争は日本にいる私達と一直線に繋がっている。無関心、無関係ではいられない。
資料も多 -
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残ってるものの赤裸々さと、残っていないもの、わからないことの重たさが、そのまま丁寧にまとめられていて、ここはわからないんだな、ということの方にむしろ締め付けられるような気持ちになりました。
家族には、記憶装置としての機能があると聞いたことがあります。お兄ちゃんは麻疹にかかったことあるよとか、おばあちゃんはコーヒーが好きなんだよとか、そういう、他の人にはどうでもいい記憶を、家族は価値判断せずに持っていられる、という意味だったと思います。
シンプルな幸せとは対極にあるように見える家族が、これほどの記憶を残し整理してきた事実が、意外でもあり、救いのようにも感じました。
ひとくくりにした属性ではなく、 -
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装丁からは想像もせぬ壮絶さだった。敗戦時の密航やコレラ船。日本に住むことになってからの差別と困窮。記録されていないだけで、その当時の人の数だけ絶望があったんだよな…と思いを馳せる。描かれている、白人が黒人を蔑む冷たい目、米や露が東洋人を蔑む目、日本人朝鮮人が互いを憎み合う感情、そして徳永ランドリーでも男が女に手をあげる惨状。それで苦労したはずの登志子さんも、後年のボランティアではハンセン病のボランティアでは偏見があったようで…。少し手に障害がある娘の逸己さんが、全てを悟ったような印象で、影ながらこのご家族を支えてらしたように思えた。怒涛の時代の家族の記録。自分の中にもある無意識のうちの差別や偏
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著者が日本や第一共和国時代の韓国を批判するのは勝手だ。この本には尹紫遠は金達寿や同じ密航組の尹学準といった当時は総聯に所属して後に「季刊三千里」の同人となった人達と一緒に映った記念写真が掲載されているが、彼は昭和28年に創元社から再版されて翌年に岩波文庫から刊行された金素雲の「朝鮮詩集」の解説を書いている。こんな事は「首領」や朝鮮労働党の指導に反する事を主張すればただでは済まない北朝鮮はもちろん、当時なら韓国でも出来ない。日本に密航したからこそ差別は受けて貧しくても相対的には韓国でも北朝鮮でも体験出来ない自由を味わえたのではないのか?「「在日朝鮮人文学史」のために」は朝聯・民戦・朝鮮総聯の記述