錦織良成のレビュー一覧
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地元、島根県の一畑電鉄の話。
宍道湖の夕陽や、そのまわりを走るバタデンの懐かしい情景を思い浮かべながら、作品の世界観に入り込むことができました。
自分自身、就職から島根を離れて都会で暮らして15年経つが、著者が後書に書いている「離れて分かる故郷の良さ」にはとても共感する部分がある。
赤字路線だから、税金の無駄、無くした方が良い。
日頃、慌ただしい日常を送っていると、どうしても物事の表面だけを捉えてしまう場面が多いが、この作品を通じて、物語の背景を捉えることの大切さ、本当にそうだろうか?と考えてみること、を自分なりに学べた気がする。
素晴らしい作品でした! -
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49歳の筒井肇に自分を見た人は多いのではないでしょうか?
家庭を顧みずに仕事だけの人生、本当はやりたいことがあった・・・
人生を良く、深く生きたい。生きて欲しい。
最後の場面では涙が止まらず、東海道線内で顔がくしゃくしゃになりました。
一流会社を退職して、運転手になった。
「やっと乗ってくれたね俺の電車に」
「うん」
「・・・由紀子」
「ん?」
「終点までちゃんと乗っててくれよな」
「はい」
由紀子はしっかりと返事を返す。
そう、線路のように二本のレールは併走する。
一本に重なる道だけがフ符の進む道とは限らない。
どちらかが、どちらを犠牲にするのでもない。
勝手な方向へ離れていくのでもない。
そういう夫婦の形を肇と由紀子は進んで行こうとしていた。
こうやって終点まで一緒に走ろう。
線路の続く限り走っていこう。 -
Posted by ブクログ
これは映画を補完する物語だと考えると、とてもいい内容だと思います。まずは皆さん、読む前に映画を。
理由はひとつ。主人公・肇だけでなく、彼以外の登場人物の心の動きをより深く知ることができるからです。
「あのシーンで、実はこんなふうに思いながら居たのか」
「あのセリフの裏にはこんな想いがあったのか」
きっと、ひとつ、ふたつ、新たな感動が湧きあがります。特に主人公・肇の妻の心の動き、母・絹代の息子へ伝えた方心のメッセージなどは、小説だからこその描写です。それ以外にも、映画では短い時間にしか登場しない人物たちにも、しっかりと物語が書き込まれています。不覚にも久しぶりに小説で涙しました(苦笑)。もちろん、映画の映像があるからこそ余計に、だと思います。
映画「RAILWAYS」を見た人は絶対に読んで欲しい。もしかしたら映画で消化不良だった人には、この小説が太田胃酸になってくれるかも(笑)。まだ見てない人は、是非映画から。人生を生きるということの意味や、親子の絆について、この作品はいろいろな示唆をくれます。僕のカテの中では「優しくなれる本」カテにしてもいい内容でした。ただ、僕はそれ以上に勇気付けられる部分が多かったということです。
肇に教えられた挑戦を恐れない心。
絹代に教えられた死をも受け止める親の愛情。
倖に教えられた家族の素晴らしさ。
由紀子に教えられた夫婦という形の意味。
なによりも、人を好きになるということの素晴らしさを、全ての登場人物にあらためて思い知らされる、そんな物語でした。 -
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最近、電車の中吊りでやたら見かける映画のノベライズ版。タイトル通りの内容です。
ちなみにフィクション。こんな夢物語、あるわけ無いやん!とツッコミたい所ですが、千葉県のいすみ鉄道には50代の運転士が誕生するそうで。いやはや。
うーん、どうにも青臭いストーリー展開で、ちょっとどうなんだコレは、というのが率直な感想。前半の主人公が葛藤している部分は結構良かったんですけどね。読んでいてツライ部分もわりとありましたし。だけど、そこから一足飛びに(養成過程での苦労とか、人間ドラマとか、そういう話がもっとあるものだと思っていた)運転士になって、懸案がきれいさっぱり解決していくという展開に、やっぱり安易だなあという印象が拭えません。
色々なキャラクターの味を出そうとしたのか、地の文の視点がころころ変わるのにもどうにも馴染めませんでした。突飛な比較ながら、今野緒雪「マリア様がみてる」なんかはこの切り替えが絶妙で、シリーズの大きな魅力にもなっていたのですが、本作ではみんなの心情をぜーんぶ写実的に盛り込みたかった、という意図しか感じられず、どうにも詰め込みすぎで落ち着きません。
全体としては美しく良く練り上げた作品だとは思います。コレに出雲の田園風景の中をコトコト走る電車の画が加われば、映画としてはバッチリでしょう。だけど、文章単体で読むにはちょっと厳しかったかなあ。
個人的には、無理に自分の境遇と重ね合わせようとして、失敗しちゃった感じがしていやはやなんとも… -
Posted by ブクログ
中井喜一さん主演で島根が舞台となった映画のノベライズ本ですが、
映画を観ていない私でもとても感動を覚えた一冊でした。
筒井肇は大手家電メーカーの経営企画室長。
リストラのために工場閉鎖を淡々と進めるなど、
仕事一筋の筒井は取締役への昇進が内定するなど順調に会社人生を送っていた。
その反面、妻や娘との会話は少なくなりすれ違いが多かったが、
筒井はそれを不満に思いながらも仕事に邁進していた。
そんな時、島根に住む母親が電車の中で倒れて入院したという知らせが入る。
帰郷した筒井は母親の面倒を見るために東京の病院に転院させようとするが、
重い病を持った母親は自分が生まれ育った島根の地を出ることを嫌がる。
今まで家庭をないがしろにしていた筒井の中に自分の人生を振り返る時が訪れ、
自分の子供の頃の夢だった一畑電車の運転士になることを決意する。
そんな筒井に妻も娘も徐々に心を開いてくるが、、、
会社での将来を嘱望されている主人公の働きぶりや、
家族とのつながりや母親の介護をめぐる葛藤など、
実に現実味のある設定でグイグイと惹き込まれてしまいます。
誰しも子どもの頃に持っていた夢を叶えるというのは難しいですし、
夢は夢として違う人生を送っている人が多いのではないかと思いますが、
子どもの頃の夢を50才目前にして叶えていく主人公の姿に共感を覚えました。
私も子どもの頃に祖母が住んでいる町に路面電車が走っていましたので、
祖母に連れられて路面電車に乗るたびに運転台の真後ろに陣取って、
運転手さんの操作する様子をワクワクしながら見ていたことを思い出します。
映画自体は中井喜一さん主演で2010年に公開されましたが、
今まで観たいと思いながらなかなか観る機会がありませんでしたので、
これをきっかけとして映画もぜひ観てみたいと思っています。