小塚原旬のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
かつてサンフランシスコ市庁舎だった巨大建築物の鋭利な先端部に、全裸の若い男が串刺しになっていた。雪の降る中で発見された死体の胸元には大きな空洞があり、肋骨内部まで凍り付いていた。心臓のない異様な死体は、AI主導の捜査により、何故か事故と判断されてしまった。サンフランシスコ警察の捜査官であるノア・レーンはこの判断になっとくいかず、上司に逆らって、捜査を続けるうちに、国家を揺るがす真実が見えるようになってきて――。
具体的な言及は避けますが、最初からある背景情報が伏せられているような違和感があったのですが、まさかこういう形で明かされるとは。なんという魅力的な謎、そしてその謎が尻すぼみにならない、あまりにも美しいラスト……。複雑に絡み合った糸を解いていった時、最後に、『愛』が浮かび上がってくる。一読、忘れがたい余韻が残る作品でした。 -
Posted by ブクログ
近未来のアメリカ、AIが捜査を主導する社会
100ヤードもの建物の先端に全裸の死体が突き刺さっており、心臓の部分がくり抜かれていた状況を、AIが事故と判断した出来事の真相を追うお話
時代は2084年の近未来
雪のフランシスコの朝、議事堂の天辺約100ヤードの高さの場所で、男の死体が串刺しになっているのを発見される
その死体をドローンで降ろしたところ、あるべき心臓の部分が欠落していて、その破片も見つかっていない
この時代、「TOP-PARDS」トパーズと呼ばれるAIによる捜査立件まで統一されたシステムが捜査を主導し、警察はトパーズの求める情報を現場から採取して上げるのみ
そのAIがこの件を事故として判断する
主人公の捜査官ノア・レーンはその判断に納得が納得が行かず、追加捜査の手続きを強引な手法でもぎ取り、チームの仲間と共に捜査を開始する
現在の大統領はトパーズを開発した会社の人間で、現在もトパーズの情報を閲覧、設定できる立場にある
心臓がくり抜かれていた事から、ノアは違法臓器移植が関係しているのではと疑う
そして大統領は肺が悪いという情報
与野党の大政党と第三勢力を巻き込んだ政治的な陰謀の可能性
一方、エルクハースト女子経緯務所では一人の女性が収容される
彼女は何十人もの人を殺しながら死刑ではないらしく
さらに、自分の息子に会うため脱獄をしようとしているようで……
SF、ミステリ、政治劇などの様々な要素を含むお話に仕上がっている
捜査を妨害するような外部からの圧力、情報を秘匿する病院、政治的な対立と捜査への介入、母の容態、ノアの胸にある心臓移植を受けたような傷跡とその記憶がないという現状、昔から付かず離れずな関係性の幼馴染、刑務所の脱獄を企む女囚達との関係性、事故を仕組んだハッカー
何かと思わせぶりな前フリが満載だけど、最後には全てのピースがぴっちりと収まるべき場所に収まる
ただ、ストーリーに都合がいいように設定されたかのようなSF要素がある
大統領が管理者権限に近しい権限を持つトパーズというシステム
クローンの存在(そう簡単に用意できるものなのか?しかもバレずに)
意識のない人ですらリハビリのために運動させる事ができる技術
出来なくはないだろうけど、色々とツッコミどころもある
まぁ、所詮はフィクションですしね
あと、自由に明晰夢が見られ、しかも現実よりも精神的な刺激を受ける事ができるようになった社会
自分の願望を夢で見耐えるようになっったため、現実では犯罪に走る人が少なくなっている
その分、現実での人間関係や欲望が希薄になっている
どっちがいいんでしょうね?
アヘン戦争のきっかけにしても、現在の麻薬漬け社会にしても治安は悪化しているので許容はできないけど
人々を堕落させるものが却って治安を良くする方向に働くとしたら、社会はそれをどう取り扱うべきなのか
行き着く先はマトリックスみたいな世界になる気がしないでもない -
Posted by ブクログ
第13回アガサ・クリスティー賞優秀賞受賞作。
(”大賞”ではなく”優秀賞”)
時は18世紀。ノイエンブルク公国の司教区で、「”永久機関”の開発者には莫大な褒賞を与えると司教がぶち上げた為、それを目当てにした発明詐欺が横行する事態に。
機工審査官として真贋を見極める任務を担うテオは、かつて父親が発明詐欺の濡れ衣を着せられ、火刑に処されたという哀しい過去を引きずっていて・・・。
近世ヨーロッパが舞台の工学系ミステリ。
何だかマニア受けしそうな異色作(意欲作とも)ではあるのですが、そうですね・・「アガサ・クリスティー賞」にしては、ミステリとして弱いかなー・・という印象です。
まず題材が「永久機関」(外部からエネルギーを与えなくても仕事を永久にし続ける装置)というのがマニアックというか、動力系に興味がある方は楽しめると思うのですが、その辺無知無知な私は、機工の説明部分はつい流し読みになってしまいました。
謎解き要素としては、発明詐欺集団の追及と、父の冤罪を晴らす為の真相を追う流れで、ストーリー展開的には地味ではありますが、終盤の思わぬ”仕掛け”は面白かったですし、終わり方もハッピーで読後感は良かったです。
あと、キャラクター造形はなかなか良くて、特にアルベール家の三兄弟のキャラが魅力的でしたね~・・
ワイルドだけど茶目っ気もある長男・レオン。
機工オタクでシニカルな次男・テオ。
周囲を魅了する天使(いや、小悪魔かもw)のような三”男”・リュカ。
・・と、それぞれ”いい味”が出ているのですが、個人的にはリュカが最強だと思いましたw。
ということで、近世ヨーロッパの雰囲気と工学系マニアックミステリの異色タッグを楽しませて頂きました~。
個人的には、この雰囲気だったら(司教とか異端審問官とか出てくるので)題材が永久機関ではなく錬金術とかだったらミステリと相性良かったかも?とふと思った次第です~(単に自分の趣味嗜好やん( ゚д゚)ハッ!)。