アメリカ南部の現実… 人間の醜さと歪みを余すところなく描いた社会派ノワール #傷を抱えて闇を走れ
■あらすじ
アメリカ南部、高校生のアメフトのスター選手であるビリーは、ある日義理の父親と喧嘩になり殴り飛ばしてしまった。翌日義父の様子を見に行くと、なんと彼は殺害されてしまっていたのだ。一方、アメフト
...続きを読むのコートであるトレントは、チームを優勝に導くためにビリーを庇うことにした。しかし警察はビリーを疑っていた…
■きっと読みたくなるレビュー
アメリカ南部の現実がそこにある。人種差別、貧困、暴力… 読めば読むほど、やりきれない感情に押しつぶされそうになる。
しかしながら、その闇の部分を力強く書き切っている本作。ノワール小説でありながら、エンタメ小説というより文芸作品寄りで書かれているため、一文一文がじわりと胸に染み入ってくる。
誰かが悪いというわけではなく、むしろみんな努力しているに、光がある生活につながらない。さらに物事の解決の仕方や価値観の齟齬が生じることによって、最終的に悲惨な結果を招くことになる。もし環境が違っていたら、きっと経済的にも精神的にも幸せになっていただろうと思わずにはいられません。
特に読んでて辛かったのは、物語の中盤。ローナとの出会いによって変化の兆しが見えてくるんですが… 子どもたちが成長できない環境に置かれてしまうのは、なんともやるせない気持ちになりますね…
私は日本人ですが、ここまで人種差別はヒドいもんなのかとショックでした。もちろん本作はフィクションなんですが、現実も中らずと雖も遠からずなんでしょう。アメリカ南部の知識、社会や人生勉強のためにも読んでおくべき作品です。
■ぜっさん推しポイント
読書というのは人生に潤いと成長の機会を与えてくれますよね。どんな本であっても、生きるヒントや新しい知識はもちろん、体験できない世界や人との出会いすら叶えてくれる。本作の主人公も、一冊の本によって少し希望の光を感じることができたようです。
世界中に難しい問題はいっぱいあるけど、きっとどこかには解決につながるヒントがあるはずなんです。諦めずに前を向いていたいですね。