ウィリアム・ギャディスのレビュー一覧

  • カーペンターズ・ゴシック

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    地の文でも会話でもナレーション的な説明がされず、読者は情報の断片を拾いながらストーリーを作り上げていくことになるが、それは陰謀論を作り上げるのとそう変わらない行為のようにも思える。作中の各人物は、その人について話している人が誰か、対話の相手が誰かによって印象が揺れ動き、読者にとって信頼できる人物は見当たらない。謎めいた言葉の連なりは、今起きている会話や動作の描写の中に、テレビで流れている映像の描写や作品内外のテキストをシームレスに織り込みながら流れていき、幻惑されるような美しさを感じさせる。言葉そのものが、今起きていることのレイヤーを分裂させ、上塗りし、つぎはぎしていくかのような。説明のなさや

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    2025年06月22日
  • JR

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    机の上に両足を上げ、椅子の背をいっぱいに倒し、太腿のあたりで本を開いて読んだ。手許にある書見台では厚すぎてページ押さえがきかないのだ。画像では実際の量感がつかみにくかろうが、菊版二段組940ページ、厚さは表紙部分を別にしても約5センチある。比喩でも誇張でもなく、読み終えた後、背表紙を支えていた右手が凝りで痛くなっていた。言葉を換えて言えば、持つ手が痛くなるまで、読んでいられるだけの面白さを持っているということだ。

    70年代のニュー・ヨークが主な舞台。見開き二枚の舞台地図、八ページに及ぶ登場人物一覧が付されているが、時間的にはたかだか数カ月程度、入れ代わり立ち代わり顔を出す人間の数は多いが、主

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    2019年03月18日
  • カーペンターズ・ゴシック

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    とってもしんどかったわ。カーペンターズゴシック調の建物があって、そこに夫婦が住んでて、そこで起きる出来事。と言っても、特に。5年前の飛行機事故でいまいち体の調子は良くないらしく、妻は以前住んでたNYまで行って、飛行機事故の訴訟のために検査みたいなのをしてる。それ以外は家にいる。電話が沢山かかってくる。訴訟のもあり、旦那の怪しい仕事の件、伝えときます。弟がたまに来る。旦那と仲悪い。お互いの悪口。それが、カッコなく、段落の中にみっしり埋まっている。誰がいつどこで、を敢えて削ぎとりイマジネーションを味わう方式。

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    2020年03月22日