湖畔に建つ洋館で密室殺人… 華文ミステリ界「密室の王」が書記す、ど真ん中の本格ミステリ #厳冬之棺
■あらすじ
中国上海の郊外、湖畔のほとりに建つ洋館には、陸家の一家が住んでいた。ある大雨が続いた翌日、半地下のため水没していた小屋の中から、主人が死体となって発見される。警察が捜査するも犯人捜しは難
...続きを読む航し、さらなる事件が発生してしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
中国の人気ミステリー作家先生のデビュー作とのことで、いやー力作ですね。作品を見れば、明らかに本格ミステリーをこよなく愛しているのがわかります。人に読んで欲しいというより、むしろ自分が楽しんで書いてるのが伝わってきますね。
また日本の文化にも影響を受けているのも嬉しくなります。中国とは政治体制も文化も経済も生活環境も、我が国とは違うところも多いですが、本格ミステリーを愛する共通点があることは、とても喜ばしいことですね。
本作、まず驚かされるのは、ジャンル本格ミステリーとして、しっかり形を成している点。館、密室殺人、見立て殺人、家督争い、探偵役、衝撃的な犯人、信じられない動機、バラエティに富んだキャラクターたち。これらが全て揃っていて、しかもバランスもとれている。読者を惹きつける構成も上手で、もう序盤から読むのをやめさせてくれないんです。
なによりメインの密室トリックの問題提示と、その解法が素敵でいいですね。これぞ本格ミステリーです。発想の角度としては一般的かもしれませんが、読んでると素直に作られた密室トリックが愛おしてしょうがないんですよ。
またキャラクターもポップで愛着があってイイ!本格ミステリーでは登場人物が古臭くなりがちですが、しっかり魅力付けができてる。職業や文化や価値観など、今風にしっかりアレンジができて、親しみをもって作品に没頭できました。
本格ミステリーを素直に楽しめる良作だと思います、続編も期待しちゃう!
■ぜっさん推しポイント
本作の魅力は、絶妙な古臭さと陰湿さの中に、軽快さが光っているところ。動機なんて鬼のようにエグイですし、最序盤の導入とラストの世界観の違いは、なかなか他の作品では見られない。作家先生のミステリーへの情熱を感じてほしい作品です。