ジェイン・ジェイコブズのレビュー一覧
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「輸入置換」とか「衰退の取引」とか、なかなかに生硬な翻訳用語が多用されているため、シロウト的にはもう少し噛み砕いて説明してほしいなと感じたし、全部理解できたかと言われると心許ないが、かなり核心を突いた本なのではないかと直感的に感じた。
地方の経済活性化とか、発展途上国の開発援助とか、わたしが子供の頃から世間でずーっと行われてきたけど、あまりうまくいっている例を聞かない事業がたくさんある。
税金や補助金が湯水のように使われているにもかかわらず。
木下斉氏の本など読むと、地方の町おこしの暗い闇の実情が窺われたりするが、そういうお金は誰かを潤して、そして地元には残らない。砂漠に水が吸い込まれてし -
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”はじめに都市ありき”
”都市”は文明社会の専売特許と考えられているが、そもそも人類が住まうことになった場所は”都市”だった―いや、むしろ、人類がはじめて荒野に旅立ったとき、肩を寄せ合って過ごしたはじめての夜。その場所。それはすでに”都市”であったといえるのではないだろうか。
現代社会の課題を考えるとき、都市―そして都市と都市のつながり―を中心に据える方法論。
街路には多様な世代、職業、ルーツの人々が行きかう。都市と都市、地域と地域へと交易が展開していく。自立と共生の輪が拡大していく。これこそが文明が発展してきた道筋ではないだろうか。
この本を片手に、街へ出よう。 -
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補助金が地域をダメにする
地方経済の衰退を食い止めようと、日本全国あちこちで「地域おこし」が盛んだ。たいてい役所の肝いりで、補助金がついてくる。「そんなことをやっているからダメなのよ」と本書の著者、ジェイン・ジェイコブズなら一喝することだろう。
ジェイコブズによれば、経済発展のカギを握るのは都市である。輸入品を工夫しながら模倣し、自前の製品に置き換えていく「輸入代替」は都市の機能であり、それが経済発展の原動力になる。東京における自転車産業の発展は、その優れた例である。
ポイントは、自前でやることだ。「いかなる経済も、自前でやるか、さもなければ発展しないかのどちらかである」とジェイコブズは -
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都市計画の講義などでは必ず示される『アメリカ大都市の死と生』の著者ジェイコブズが、都市同士のかかわりやそれによる都市の盛衰に目をむけて視野を広げた一冊(旧訳題『都市の経済学』)。
『アメリカ…』ほど名が知れていないが、それは、塩沢氏の解説でも指摘されているとおり、それまでの都市経済学の根本を覆すような大作であるがゆえに、かえってなかなか後世の研究者による追随や拡張を許さなかったという面があるのだろう。
しかし今日の日本では、「地域(地方)が消滅する」といった文脈から地域再生に目が向けられ、また藻谷氏の『里山資本主義』が売り上げを伸ばす等しており、ジェイコブズによる主張にようやく世間が追いつき -
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本書でいう発展や衰退の意味は、経済的にという意味である。本書では経済循環が行われる単位を地域ととらえ、そのメカニズムを説明しているが、これは非常に画期的な見方であると感じた。なぜなら、多くの経済動向に関する著作が、アメリカ、とか、日本といった国家の単位でしか語られておらず、極めてリアリティに欠ける内容に感じられたからだ。考えてみれば、日本という狭い国でさえ地域における経済格差が体感できるほどであるから、国という単位で経済云々を語ること自体乱暴であると気付くべきであった。
本書はソ蓮崩壊前の80年代に書かれたものであるが、その内容については今日でのも十分説得力のあるものだと感じる。 -
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この本のテーマは、発展を遂げる地域と衰退する地域の違いは何なのかという事。国家単位で経済をとらえ国際分業こそが効率的だとする経済を真っ向から否定する。
キーワードは「輸入置換」。ある地域(都市)で従来輸入していた財を自らの力で生産し、自ら消費し輸出もする。そのような力を持つ地域こそが発展するという。財Aの輸入置換が可能になれば、次は財Bの輸入が可能になり・・・というように良好なサイクルに達した地域は発展する。
しかし、補助金や公共事業、工場の誘致、単純な地域間貿易に頼る(これを衰退の取引という)地域は衰退の一途を辿る。筆者のジェイコブスは世界中の様々な地域の盛衰からこれらの法則を導き出す -
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再読。
主流の経済学の枠組みから出発したわけでもない、ジャーナリストとして出発した著者の、世界を読み解く鍵を説明してみせる技量に圧倒される。
著者の思想は、一貫して、エリート・デザイナ達による計画的な社会制御よりも、自発的でバイタルで細胞的な活動こそが社会のエッセンスであるという信念に支えられている。かといって、日本的なリベラルというわけでもないのが面白いところ。
「これから100年後に、もし歴史家が、日本の衰退の開始時点を知ろうとすれば、1977年が一つの目安となろう。」(pp322-323 第13章 苦境)税率の上昇が始まり、都市間の活発な活動が後景に退いて、政策としての補助金や国家防衛的 -
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地方の問題:都市や他国が生んだ高付加価値のものを購入して結局お金を吸い上げられる
公共事業の問題点:土地を買収しても結局高齢者なのでそのまま国債に充てられる。またその後は都市に出た子孫に継承されるため、結局富は都市に流れ込む
地産地消の重要性
多くの財やサービスを域外に頼っている現状 域外との輸出入バランスの不均衡
農業が主要産業の鳥取県でも、給食の食材の多くを県外に求めていた
地域が生み出す富の多くを中東やインドネシア、あるいは国内の他地域から輸入するエネルギー代として域外に流出させ続けるのはいかがなものか
地域通貨:地域間格差を埋める手立ての可能性
中央集権という「生活習慣」によって地 -
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東京、というか首都圏に住んで働いていると地域経済みたいな概念がピンと来ないようなところがある。転勤で東京以外の土地にいくつか住んだが、転勤族として住むとその土地の経済とは半身だけ切り離されていたようなものだし、日本はどこまでいっても東京の周辺地域みたいな感じもある。その点、アメリカに行くと大企業の本社なんかもいろんな都市にあるし、日本よりかは地域経済が話題に上がりやすいような気がした。
この本は、国家単位で経済を捉えていては本当の姿がわからない、都市に焦点を当てなければ、と説く。なかなか日本からはこうした議論は出てこないのでは、と思う。
原著は1984年刊。まだアメリカが経済については自信