フランチェスカ・T・バルビニのレビュー一覧

  • ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス

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    ネタバレ

    クオリティーの高いアンソロジーだった。どの短編も面白かった。
    『ローズウィード』は過度な温暖化により都市が水没した未来が描かれていた。風刺がきいていてこの先どうなるのかを長編で読みたいと思わされた。
    『社会工学』は主人公のキャラクターが良い。たった一人で拡張現実を壊して見せたところが小気味よく、人間の考え出したシステムの脆弱性や人間の愚かさが可視化されたようだった。どれだけ誤魔化そうとも本当の現実からは逃れられないのだ。
    『人間都市アテネ』は人本主義を悪用したような話で、最後に記憶を消される一文をサラッと入れているところが非常に良かった。どれだけ人々のためだと説こうとも、本音では管理対象なのだ

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    2025年06月05日
  • ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス

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    11名の作家によるギリシャを舞台にしたSF短編小説アンソロジー。
    めちゃめちゃ良い本だと思った。馴染みの無い地名や人名の感じに慣れるのに少し苦戦したが、そこを越えるととても豊かな物語が広がっていた。
    ギリシャ、ひいては世界が抱える社会問題を含んだディストピアやポストアポカリプスな話がほとんどだが、そんな世界を絶望しながらも強かに生きていく登場人物たちに胸打たれる。作家ごとに異なるSF的要素も魅力だが、そこに乗ってくる様々な感情に揺さぶられる感じがした。

    ギリシャは「SF発祥の地」と言える国だが、ジャンルが花開いたのは2000年代に入ってからだそう。そんな中で11名の作家陣が見つめた、ギリシャ

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    2024年09月23日
  • ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス

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    ・フランチェスカ・T・バルビニ&フランチェスコ・ヴァルソ「ギリシャ SF傑作選 ノヴァ・ヘラス」(竹書房文庫)を読んだ。中村融による「訳者(代表)あとがき」 にかうある。「ギリシャSFと聞いて、驚かれた方も多いだろう。ギリシャにもSFがあったのか、と。じつは筆者もそのくちだった。」(267頁、「く ち」に傍点あり。)これがギリシャSFの状況を如実に表してゐるらしい。ほとんど誰もが知らないのである、ギリシャにもSFがあることを。本書自体が 英語からの重訳である。本書の序文「はじめに」にギリシャSFの歴史が書かれてゐるが、 これが日本語版のための書き下ろしであるらしい。これが英語版にも付されるやう

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    2023年07月18日
  • ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス

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    ギリシアのSFと言われても、全く想像できない感じだが、ぱっと見は英米のSFと変わらない。序文によると出発点はアメリカSFの輸入だったそうなので、当然だろうか。ただ、アイデアの使い方なんかを見ると、むしろ日本SFに似たテイストを感じる。あくまでも感じだけれど。反面、これもあと序文にあるようにディストピア的な世界観に対して、登場人物のへこたれない感じがすごい。元から社会や政府に対して、ろくに期待してないんだろうなあなどと決めつけてしまっては、ギリシアの人に失礼かも知れないが。

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    2023年04月20日