大鹿靖明のレビュー一覧
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日本のお家芸であった半導体製造。「産業の米」と呼ばれ電子立国の屋台骨を支えていた半導体が韓国、中国、そして台湾にも生産量、技術力も追い抜かれている。技術力については1周遅れどころか2周も3周も遅れている惨状。
そしてこの現状を打破すべく電子立国復活を目指して現在北海道に建設中のラピダス。未だ世界のどの半導体メーカーも到達していない微細な最先端半導体の量産を目指しているが、ただ中身をみると半導体技術はIBMからの提供で日本自前の技術ではない。兆を超える多くの税金を投入しているがライセンス料はIBMに取られ、しかもラピダスが生産する最先端半導体の販売先の目処がほとんど立っていない。
量産体制開始は27年と目前に迫っている。日進月歩の半導体技術の世界だが、果たしてラピダスが生産する最先端半導体を受け入れる世界市場が出現しているのか。
乾坤一擲にもみえる大きな賭けに日本が出ざるを得なかったのはなぜか?ここまでに追い込まれた凋落の原因はどこから始まったのかを紐解いていく、日本経済の現在地がよく分かるノンフィクション。お勧めです。 -
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本書は、日本の半導体産業が辿った半世紀におよぶ波瀾の歴史を解きほぐした、500ページを超える圧巻の大作である。
新聞記者という最前線の取材者が目の当たりにしてきた栄枯盛衰のドラマの中では、かつて世界を席巻した日本企業の半導体部門や、打開策として設立された合弁企業が次々と淘汰されていく過酷な現実が描かれる。その容赦ないドキュメンタリーは、現代に至る「日本の敗北」の構造を余すところなく描き出しており、読者に強い衝撃を与える。
しかし本書は、単なる失敗の記録にとどまらない。衰退の嵐の中で「細い糸」を途切れさせることなく技術を紡ぎ続け、現在の生存へと繋げた企業の執念、さらにはTSMCの誘致やラピダス誕生に至る最新の動向までが網羅されている。
かつての敗戦から怒涛の再起へと向かう現代の潮流までを見渡した本書は、日本の産業政策や技術史を語る上で決して欠かすことのできない「至高の歴史書」と呼ぶに相応しい名著である。 -
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1980年代に世界を制した日本の半導体産業が、みるみる凋落した1990~2000年代の経緯と、2020年代になって発表されたTSMCの熊本進出、ラピダスの北海道進出の舞台裏を詳細に描くノンフィクション。
本書は2部構成です。前半部分はレアアース、太陽電池、EUV(半導体製造に必要な露光装置)、液晶など半導体が絡むデバイスで日本がその地位を失っていく経緯が各章毎にまとめられています。
後半部分はTSMCとラピダスの誘致を勝ち取るために奔走した経済産業省の担当幹部や自民党国会議員の動向が時系列でまとめられています。
前半部分は読んでいて辛くなります。「あの時、こうしていれば…」的な局面が次から次へと描かれています。日本国内にメーカーが多過ぎた、各メーカーが設計から製造までの垂直統合モデルに固執し過ぎた、リスクを取って開発を続けられなかった、技術流出に対して鈍感過ぎた等々、原因はいくつかありますが、それがほぼどの分野でも共通しているように感じました。
メモリーや太陽電池については本や新聞記事で目にすることも良くありますが、EUVについてはその仕組みなども含めて詳しく触れている著書があまりない中、本書は結構詳しく述べられていて非常に興味深かったです。
後半部分は、経済産業省というのはこういうやり方で政治家を動かして、そして産業振興の方向性を定めて行動するのかという部分が詳細に描かれています。半導体産業はもはや民間だけで成立する産業ではなく、国が積極的にバックアップして育成するのが当たり前となった今、それに立ち遅れて地位を失った日本がいかに復活を目指しているのか、熊本のTSMCと北海道のラピダスを舞台として紹介されています。
ラピダスについては、「半導体の微細化が限界に達しようとしている今、巨額の資金を投入するラピダスは航空機の時代に戦艦大和を建造することに似てなくもない。その方向性は数年後に明らかになるだろう」と結んでいます。果たして、兆単位の投資が実を結ぶのか、非常に気になります。
産業・企業ものノンフィクションで著者の大鹿氏の本は、ハズレがありません。その著者が30年にわたる取材を基に半導体という重要分野を扱った本書は500ページを超えるボリュームですが、それを感じさせない充実した1冊でした。 -
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私はある同人ゲームの二次創作で、東芝のバイセル取引による粉飾をロールプレイさせるくらいにこの題材に興味を持っているのだけど、なんとまあ面白い。
西室泰三氏の生い立ちから始まる本書の構成には初めびっくりした。しかし、だからこそ、西室泰三氏が出世と名誉を求め続けた姿に納得できる。
結論として、東芝の迷走と悲劇はトップに人材を得なかったことによる。
とはいえ、東芝はどこでどうするべきだったのか。
バブル崩壊直後で行き詰まりを感じている時に、事業全体の理解は薄いが米国通でDVD規格をまとめた西室氏を社長に抜擢する誘惑を、どうすれば振り払えたのか。
会社全体が弱っている時にパソコン事業を見事に立て直した西田氏を、社長に「しない」ためにはどうすれば良かったか。
原発に全てをかける原子力畑出身の佐々木社長をどうすれば止めることができたのか。(最初は「ウェスチングハウスなんて買ってもしょうがない」とか自分で言ってるのに!)
それらの答えが本書にある訳ではない。しかし考える材料としては非常に具体的で役に立つ資料だと感じた。
(社内昇格で社長を選ぶから上手くいかんのでは、という気もするが、稲盛和夫氏のJAL再生とかしか上手くいった例も思いつかんし、三人とも出世欲が成果の源泉みたいなところがあるしなあ。) -
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日本の産業のトップを走ってきた東芝
先日、その東芝が上場廃止した。
この本は東芝王国が崩れていく内部を描いたルポ
東芝の悲劇は「模倣の西室、無能の岡村、野望の西田、無謀の佐々木」と評された4人のトップの起こしたまさに”人災”。
「バイセル取引」と粉飾決算
名誉と権力にこだわったトップ
「おれがおれが」の手柄自慢
プライドが高く間違いを決して認めないトップ
そして時代を見ることができなかった原発推進
結局、東芝は半導体、メディカルとこれから伸びゆくものを切り売り。で、社運を賭けたのがWHの原発事業って…。(のちにWHは倒産するんだけどね…)
東日本大震災の時の原発事故で原発よりも他のクリーンな電源…とドイツは舵を切ったのに日本の政府・エネルギー庁は逆に「原発の必要性をごり押し」って…
原発なんて田中角栄時代のもんでしょ。
この本を読むと、東芝だけを笑うことは絶対にできない。日本政府のとんちんかんで時代を読めない対応はある意味、読めば読むほど怖い。
まさにタイトル通り悲劇でしかない。 -
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東日本大震災当時の福島原発に関わる当時の状況が伝わる。現場で指揮しながら命掛けでメルトダウンを食い止めようとしていた東京電力の職員がいる一方で全く役に立つ事もなく、責任逃ればかり考える役員連中、そしてその後の銀行や政府、マスコミの対応に、今の日本がどれ程堕落しているのか、そして、あれから数年たった今、また核廃棄物無問題で揺れている状況を見た時に、喉元過ぎれば…と言われるような事態になっている事を考えると、また同じ過ちが繰り返されていく事を懸念する。本自体は、あまりに長く難しいので途中でやめてしまったが、過去の出来事にしっかり触れていく事は大事だなと改めて感じた。
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★絶対的な取材量と熱量★新聞や雑誌、テレビの記者がすべてジャーナリズムなのかはもともと疑問がある。単なるライターであり、そこにジャーナリスト精神を常に求めるのは違っている気がする。とはいえ優れたノンフィクションの裏側には圧倒的な思いと取材量があることが、各人の飄々としたインタビューから伝わってくる。
長谷川幸洋氏(東京新聞論説副主幹)が、高橋洋一氏らネタ元が自分で文章を書くようになったとき、政策ではなくジャーナリズムについて書かないと勝負できないと判断したというのは興味深い。論説委員は報道とは異なり、相手が提起していない議論を自分で提起できるかが重要、というのはなるほど。取材先のアジェンダで議論をしている以上は話は相手の掌の上にある。
大治朋子氏(毎日新聞)も堀川恵子氏(元広島テレビ放送)も、あと一歩、動けなくなるまで取材をする努力があって、初めて実を結んでいる。
小俣一平氏(元NHK)は組織ジャーナリズムとして、社内で権力を握ってこそ自分のしたい報道ができると冷徹に見据えて、海老沢一派に入る。観念論だけでなく白黒飲み込んでいる迫力がある。編著者の自分が所属する朝日新聞に対するもどかしさを乗り越えるほどだ。 -
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原子力発電所の危機管理能力は日本に不在
結局「米国頼り」独立国のレベルではない(148)
これで原子力発電が国策とはおこがましい
無責任極まりない
莫大な国家予算をつぎ込み、原子力の権威・権勢をほしいままにしてきた「専門家」の誰1人責任を取ろうとしない
1945年の敗戦と全く変わらない構図
いま「コロナ」でも同じことが繰り返されようとしている
日本国内の「専門家」というガラパゴスでしか通用しない「専門性」を振りかざして権威を見せかけて済むのは平時だけ。非常時・戦時に求められる「危機対応力」は皆無。
そのお粗末さを見せつけられ、最後の帳尻は国民に。
説明責任が皆無
何かを隠しているか、判断が出来ないんだ(菅首相100)
日本の人事システム(2年ローテーション)が専門家の育成を妨げ、素人集団の無責任指導体制にしてしまった
安倍政権の内閣府集中体制はそれを加速
もはや江戸幕府の末期か、サイパン陥落後の日本政府状態としか言いようがない -
Posted by ブクログ
当時、上場廃止かというニュースを横目で見ていた程度で、大企業なのに大変だなと漠然と思っていた。最近、ビジネス会計検定を受けて財務諸表の分析や各種指標など勉強したこともあって、きの文庫が目にとまり購入。
読み進めるうちに、愕然とし気分が悪くなるくらい当時の経営陣に嫌悪感を抱いた。
一般に仕事ができる=経営ができるというのも違うんだなと感じたし、結構前から利益重視よりキャッシュフローと言われていたけれど、当時の社長たちの利益固執の酷さ。その行き着く先が粉飾。『粉飾』という明確な意識はなくとも、「バイセル取引で乗り切るしかない」という表現をしていること自体、正常ではないと認識していたはず。著者が語るように、傍流からのトップと院政はセットで企業を崩壊させるのは納得。
うちには東芝REGZAがあって愛着があったのだけど、いつの間にかこれも中国の傘下に。。
財務の独立性の大切さが身にしみた。
利益重視に走るおかげで、法人税と配当金を不要に巨額流出。キャッシュフローを合わせて見たときの、経営の危機がよくわかる。