原題『THE PLOT』。
悩める作家の話。
『二流小説家』や『ハリー・クバート事件』を彷彿とさせる。
リプリー大学の短期集中型修了課程の創作講座の講師にあるジェイコブ・フィンチ・ボナー。
天啓を受けたかのように書き上げた第一長編『脅威の発明』こそ、ニューヨークブックレビューに注目の一冊として取り
...続きを読む上げられ世間の目を集めたものの、2作目以降は鳴かず飛ばずで作家生命は今や虫の息。
ある年の講座でやたらと不遜な態度で「俺にはプロットがある」、「プロットさえあればどんな文章でも売れる」と豪語する男を教えることになる。
どうにも手を焼く男だったが、駆け引きの末そのプロットを聞き出すと、まさに衝撃もので、放心状態に。
その後何年か経ち、短期集中講座も閉鎖されたある時、ジェイコブはふとそういえばあの作品はまだ世の喝采を浴びていないことに思い至り、あの男の現在を調べ始める。。
盗作を決意するに至るまでの前半部のジェイコブの暮らしぶりや、諦観を抱えつつも何とか糊口を凌ごうと半ば自虐的に、でも僅かばかりの自我を手放さずにユーモラスに踏ん張る様は面白く読めた。
盗作後の成功の日々に届く謎の告発やバレることへの恐怖と告発者探しの展開には、これだけプロットに対する煽りを入れてしまった後ではそうそうな結末では満足できない類もの。
残念ながら著者自らが打ち立てたその壁を壊すことはできなかったかなぁというのが正直な感想。
とは言え、パトリシア・ハイスミス『太陽がいっぱい』への強烈なオマージュがまた別のいざないを持っていてにくい。
そっちが読みたくなる。
リプリー大学なんてまさか本当にあるの?と思い調べようにもマット・デイモンばかり出てきて、辿れない。