今日的問題を基礎から分かりやすく理解するのに最適な<岩波ジュニア新書>の1冊。化学は苦手なので、その部分に関しては、ジュニア向けとはいえまったくお手上げだが、その他の部分は大変興味深く読むことができた。どうしてこういうことが、こんな風にわかりやすく、新聞や雑誌には書かれていないのかと不思議な気もするが、いずれにしても知っておくべきことが満載の書といえる。
放射性物質による汚染は、もはや現在の日本においては、日々自分の身体にも及んでいると考えなければいけないのだろう。しかし、あの福島原発の大事故でさえも、月日が経つにつれ日常の意識の中から次第に遠ざかろうとしている。それは、放射能が、においもなく目にも見えず、また直接被爆したわけでもない場合、そのダメージが直ちに表れないことにもよるのだろう。原爆の例を引くまでもなく、DNAを直撃する放射線による被害は、数年後、数十年後、さらには次世代へという長期的なケースが数多く存在していることは周知の事実だ。水銀やカドミウム汚染の場合は、費用はかかるにせよ化学的な処理で害を抑えることはできるが、放射能は何をもってしても無害化できず、半減期のルールに従ってその力が減っていくのをひたすら待つしかないところが恐ろしい。原発は動かしさえすれば自動的に放射性廃棄物が必ずできてしまうわけだが、いまだにその処理の方法さえ定まらないのに再稼働という声が出ることにもっと多くの人が疑問を持つべきであろう。
序章の中で「こうした問題について自分の意見を持つためには、事実についてのしっかりした理解を持っていることが大事」であること。そしてそれは、「自分の未来を選択するために」必要であると書かれているが、この本を読んだ後には、その言葉はきっと我々大人たちにも重く響いてくるはずだ。