清水洋のレビュー一覧

  • 野生化するイノベーション―日本経済「失われた20年」を超える―(新潮選書)

    Posted by ブクログ

    これからの日本のイノベーションを考える上で、踏まえるべきことは何か?
    経営資源(ヒト・モノ・カネ)の流動性という観点からイノベーションの歩みを検証し、向き合い方を考えた書籍。

    産業革命は、個人の発明家や企業家が牽引した。つまり、イノベーションは組織的に生み出されてきたわけではなく、元来イノベーションは極めて野生的なものであった。

    20世紀に入ると、米国の大企業は研究開発機能などを内部化し、自社でイノベーションを管理し始めた。だが、本来は野性的であるイノベーションを「飼いならす」のは難しい。
    そのため近年、企業はベンチャー・キャピタルを設立するなど、イノベーションが生まれやすい環境を整える方向ヘシフトしている。

    人や資本などの経営資源の流動性が高いほど、イノベーションに良いと考えられている。
    実際、米国は経営資源の流動性が高い社会を構築してイノベーションを生み出している。

    経営資源の流動性が高いことは問題もある。例えば以下など。
    ・資金の流動性が高いと、生産性の低い既存企業が生き残る。
    ・人の流動性が高いと、優秀な研究者がスピンアウトするため、既存企業の既存の技術開発の水準が低減する。

    イノベーションには、ポジティブな面だけでなく、次の2つのコストが存在する。
    ・プライベートなコスト:研究開発費など企業が支出する費用。
    ・社会的なコスト:企業が負担しないコスト(基礎的な研究にかかるコストなど)。多くの場合は国民が負担する。

    近年、格差の拡大が問題化しているが、その原因がイノベーションにあるとの指摘がある。
    人間のタスクを代替する機械が登場すると、人が失職したり、賃金が低下したりするためだ。今後、経営資源の流動化が進むと、イノベーションの破壊的な側面はますます強まる(野生化が進む)だろう。

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    2021年02月28日