高知東生のレビュー一覧

  • 土竜

    Posted by ブクログ

    ページをめくるたび、そこで生きるしかなかった人々の生々しい息遣いと、その時代の溢れんばかりの活気や臨場感がダイレクトに伝わってきます。
    人生の歯車が思わぬところで噛み合い、視点を変えるだけでガラリと景色が変わる――そんな物語の妙に圧倒されました。

    世間からの過酷なバッシングを受けながらも、並大抵ではない覚悟で自身と向き合い、泥臭く回復(リカバリー)を続けてその第一線で発信している高知東生さん。
    世の中には上手く生きられずに迷う人が大勢いて、そして誰かを強く叩いてしまう側の人もまた、どこかに生きづらさや病みを抱えているのかもしれない。想像を絶する道のりを歩んできた彼だからこそ、どちらの立場も等しく温かな眼差しで見つめられるのだと感じます。

    誰かの生き方を「善悪」でジャッジするのではなく、すべてをありのままにまるごと抱きしめてくれるような優しさがこの本にはあります。一人の人間としての深みと、小説家としての確かな手腕が生み出した素晴らしい一冊。読み終えたあと、世界が少しだけ優しく見える、ずっと大切にしたい物語です。

    0
    2026年10月12日