ワシントン・ポストの調査報道記者が、2001年米国同時多発テロへの報復としてアフガニスタンへの空爆が開始されてから、2021年に駐留米軍が撤退するまでの20年間続いた「出口の見えない戦争」の実態を克明に暴き出した一冊。
同紙が独自に入手した情報からは、そもそも戦争の目的が明確にされず、特定の国に属
...続きを読むさない一テロ組織であったアル・カーイダの撲滅がタリバーン政権の打倒と混同され、実質的にNATO軍が新たな国造りを担うも、長年の歴史や文化に敬意を払わず欧米式の復興政策を押し付けた結果、新政府や国民との関係はこじれ、新たに設立した統治機構や軍・警察は脆弱なまま、的外れな用途に注ぎ込まれた資金は汚職蔓延を生み、軍や民間の犠牲者が増え続ける中では、タリバーン復活はむしろ必然的な流れだったことが読み取れる。
このような状況が続いた20年間、米国政府から一般国民には成功や勝利といったメッセージのみが発せられてきたことに驚かされるが、そこには真実を明らかにすることがリスクになる構造があり、当事者たちには恐らく、あからさまな隠蔽という意識はなく、事実を自らの都合に合わせて「解釈」し、外向きのメッセージを「調整」する強いインセンティブが働いていたと思われる。数年で入れ替わる様々な階層の個人が同様の「解釈」と「調整」を繰り返す中で、国全体が袋小路に追い込まれる状況は決して対岸の火事とは言えず、一般企業としても学ぶべきことが多い。