安達宏昭のレビュー一覧
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大東亜共栄圏の構想から瓦解までを解説している一冊。
現代と同様に輸入に頼っていた日本は、欧州勢力の不均衡に巻き込まれ経済的に疲弊していきます。
戦争を前提にしていない立場にも関わらず、自給圏の拡大は欧州植民地であるアジア諸国へと向かうことになります。
そんな場当たり的な流れで日本の無茶なプロジェクトは進められ管理しきれずに終わっていくのですが、敗戦後の賠償が経済的なものではなくアジア開発のための役務賠償となった点はある意味誇れると感じました。
当時の日本は敗戦しても指導的な立場を強制されるほどに役立つ存在であったということです。
まともに計画をすればこのような失敗はなかったと思いますが、情勢悪 -
Posted by ブクログ
大東亜共栄圏構想が大日本帝国の敗戦によって瓦解してしまったことは今さら言うまでもない。しかし、その構想の中身、歴史的な位置付け、我々が学ぶべき教訓・意義についてはきちんと認識されていない部分が多い。また戦争が進行していく過程で海上輸送能力が失われてしまったということ以外の「失敗の原因」についても同様だ。本書はそうした基本的だが大事な部分を新書というコンパクトな形でわかりやすく示していて大変有意義である。
まず大東亜共栄圏が東南アジア中心に理解されがちななかで、著者は朝鮮・台湾を含む「日本」と北支・満洲の重要性をあらためて強調する。とりわけ1930年代のブロック経済形成の延長上に南方資源の獲得 -
Posted by ブクログ
帝国主義としての日本が海外で何をやったのか?
というのが最近の関心事。この本は、その辺りを経済的な部分を中心に整理してくれている。
一言で言うと、グランド・デザインのない行き当たりばったりの政策と言うことになる。
総力戦の世界になって、日本だけでは戦争を戦い切る資源がないため、大東亜共栄圏が構想されるわけだが、そんなにしっかりとして戦略があるわけではない。
戦争で勝ったり、負けたりする中で、泥縄的にいろいろな政策が検討されたり、現地にまかせられたり。。。
この戦略のなさ。
これでは、もともと勝てるわけのない戦争が、全く勝てる可能性がなかったことが明確になった。 -
Posted by ブクログ
第2次大戦下の国策であった大東亜共栄圏の概説。日本を中核とする排他的な経済自給圏の構築こそがその本質というのが、筆者の視点である。だが、大東亜共栄圏構想は当初から場当たり的であり、最終的には輸送力の低下によって瓦解していく。
場当たり的な例は色々あるが、フィリピンでの綿花生産の失敗は印象的である。綿花不足を補うため、日本はフィリピンでの綿花増産を目論むが、気候風土に適せず、また治安悪化の影響も受けて、失敗する。と同時に、綿花への作付転換の影響も受けて、主要輸出産業であった砂糖の生産量は100分の1にまで激減した。
そして、このように当初から無理のある構想であったため、占領地住民の生活保障は