日本はプライマリーバランスを黒字化すべきなのか、それともガンガン国債を発行すべきなのか、本著を読むと、その両方が極論に過ぎないということがわかります。
タイトルだけを見ると、何だか「隠された真実が…」的な陰謀論っぽい香りすらしますが、何のことはない、表層から見えない解釈を含め、2016年まで日銀におられた著者の観点から考察や試論が語られた1冊です。
1. グラフには簡単に騙される
2. ちょっと特殊になってしまった日本のマインド
1. グラフには簡単に騙される
人間、グラフには簡単に騙される。だからこそ背景を知って知見を育まないといけないと本著を読んで感じた次第です。
p.87に労働生産性の水準を国際比較したグラフがあり、日本の生産性はアメリカ、ドイツ、フランスと比べて3割低い。著者が言うように額面どおり受け止めると「日本経済は本当にだめだ」となり、ただデフレ脱却やデジタル化等でだめな部分を直せば成長できるという楽観を生んでしまう。
「この比較からはあまり多くを読み取らない方が良い」「比較すべきは生産性の上昇率」
ということで、国毎に生産性は異なるので、対外比較で「日本は生産性が低い!」と叫ぶ意味はなく、推移を見るべきというのが本著の主張。
あと、個人的には「生産性」という日本語(productivityの和訳?)は、効率が含意されているように感じ、これが結果的に生産性を下げているようにも感じます。何となく、60分かかる仕事を30分で終えることが生産性向上だと思ってる気が。マクロのGDPの観点だとみんなで太る必要があって、インプットを細らせることが目的になるのはちょっと違う気がしました。
2. ちょっと特殊になってしまった日本のマインド
本著の「2%程度のインフレは当たり前という前提で賃金を決める習慣」が必要という指摘。我々に染み付いてしまったデフレマインドをどうするかという問題なのかなという気がします。
そう思うと、「簡単に雇用を切れないから賃金も簡単には上げられない」にどの切り口から切り込むかが次の課題で、本著2-7で3案が提唱されています。ここで挙げられたもの以外にも、現在実現したもの(リスキリング支援等)や、これから実現しそうなもの(給付付き税額控除等)もあり、本著の先見の明を感じます。
少し前の本(2022年出版)ではありますが、あらためて今まで日本の金融政策がどう変わってきたのかを振り返り、今後を展望するのに良い1冊ではないかと思います。