派遣国家は移り行く。最初の覇権国家は、オランダ。小国の歴史を含みながら、しかし、‟覇権″という概念を持ち込むことに世界史のダイナミズムがある。地図の上で、支配と服従の関係性を「武力、経済、思想」の絵の具で塗り替えていく、その動的な記述が世界史なのだろうという気がした。
カトリックの国であるスペインに対し、プロテスタントの国であるネーデルランド(オランダ)。スペインとオランダの80年戦争。オランダはこの戦争により独立。このさなか、1602年に、世界で初めての株式会社であるオランダ東インド会社が設立される。次はイギリス。大西洋はスペイン・ポルトガルが独占。海の覇権争いに対し、「海賊」と手を組んだイギリス。スペインとイギリスが戦争へ。スペインの無敵艦隊(アルマダ)は敗北。
地図の塗り替えは海洋国家の覇権争いだけではない。本書では多様な歴史が取り上げられるが、中東のパレスチナ問題もその一つだ。簡単に理解できるものではないが、何度でも、あらゆる立場からも、学ばなければならない。
他にも、フランス革命、ユダヤ教の歴史、オスマン帝国などなど、順不同だが、時系列というよりもテーマ別なので興味を持ったところから読める。上記に別の事を書いたが、私が最も気になったのは、エルミナ城の歴史だ。西アフリカ(現在のガーナ)のギニア湾岸に建てられた要塞で、現存する最古のヨーロッパ植民地時代の建築物のひとつ。16世紀以降、大西洋三角貿易が拡大する中で、「奴隷貿易」の中心地であり出発の地であった。アフリカ内陸部で捕らえられた人々がエルミナ城へと連行され、地下牢で拘束され、ヨーロッパや新大陸(アメリカ、カリブ)へ船積みされていったのだ。
著者は「すあし社長」といってユーチューバーでもある。早速登録してしまった。