國枝すみれのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者がほぼ実費でアメリカ現地の共和党支持者や民主党支持者をそれぞれ取材して回った渾身のルポ。
文字の連なりではあるけれど、でも個人的にニュースを見るよりも、よりアメリカの分断の現状やそこで暮らす人達のことを知ることが出来たように思う。そしてそれを通して、今の日本の置かれた状況やこれから先に訪れうるかもしれない未来を見てるかのようでもあった。
「MAGAの人たちだってアメリカがどうなってもいいと思っているわけではなく、何とか良くしようと必死なのだ」
という著者の言葉があるのだけど、このルポに出てくる人たちを見ていると、それがよく分かる。
差別的だったりデマを多用していたりするようなとんでもない政治家を支持しているからといって、その人自身に善良なる部分が全くないわけじゃない。
人はその一面だけではなくて多面的で一貫性のないものだという、それはすごく当たり前なことなのだけど、でも日常の中で人の話を見聞きするとつい忘れがちになってしまう。
こうして本や人の会話をきっかけに思い出したり考えたりして、できる限り肝に免じておきたいなと改めて感じさせてくれる。筆者の思いはもちろん、アメリカの地に住む色んな人の思いや言葉に刺激を受けるルポでした。
この本の中で気に入っている言葉や考え方、やり取りは沢山あるのですが……。
古いメディアだと揶揄され地方の新聞社がどんどん減る中、経営が苦しくても新聞を作り続けている人たちが「新聞経営は効率的になんてできない。民主主義は効率的なものではないからだ。これは市民としての義務だ」「真実はあなたが見たいものとは、違う。真実はあなたを幸せにしないかもしれない。もし真実があなたを不幸せにするなら、(それをこれから)どうやって解決すればいいのか考えるべき」ということを述べていたのがすごく印象的でした。
誠実に働いてくれる新聞社やジャーナリストの人たちの存在の有難みを感じたし、そうして彼らが届けてくれる情報や言葉を蔑ろにせずできる限りで拾っていきたいと思いました。できる範囲や保てるモチベーションは限られていますが、こうした重要な仕事を担う人がその職を続けられる環境であってほしいです。
また、とあるアメリカ市民の「外に出ないと自分の文化はわからない。……中略……自分が正しいと考えがち。もっと謙虚でなくてはいけない」という言葉も好きです。
自分を知るためにも外の世界や他人の言葉にたくさん触れていきたいなと思うなどしました。
この本はアメリカの人たちの話であるけど、でもこれは自分からかけ離れた遠い人の話ではなくて、すごく身近な人たちの話なのだと感じた。大切で貴重な一冊です。 -
Posted by ブクログ
現在のアメリカの状況があまりに悲惨で、読んでいて気持ちが悪くなるくらいだった。トランプがギャロップの支持率調査を停止させたニュースを聞いて、さすがにアメリカ人も現実の問題点に気づいてきているのではと甘い期待を寄せていたが、筋金入りのMAGAにとっては、民主党地盤の都市部に軍兵を派遣したり、ICEが呵責ない拘束や暴力を振るうことも、全く憂慮すべきことではないようだ。今年行われる中間選挙でトランプ派に自らを省みる機会が与えられるのでは、というかすかな期待も、この本を読んでいていかに楽観すぎるかを思い知らされた。前回同様、自分たちが負ける選挙は不正選挙なのだから。これらの強烈な敵対意識と思い込みの元凶がSNSなのだから、アメリカに限らず民主主義は破滅の一途だろう。
「SNSは注目を集めるコンテンツの製作者に金銭的なインセンティブを与える。事実でない情報、まったくの嘘を拡散させることで大きな利益を得ることができる。それが民主主義を壊しているのです。」
「権力者の最終目的は権力の維持。インフルエンサーは金と影響力の確保が目的だ。そして、目的が手段を正当化する」
今回の衆議院選挙の結果にもそれが表れているように、日本も遠からずその道をたどるだろうという暗い展望に、日々気分が押し下げられている。 -
Posted by ブクログ
アメリカといえば…自由、寛容、ポジティブなどの明るいワードがまず浮かぶ。この本はその影にある闇に迫ったルポ。世の中知らない事だらけ。
なんだかんだ言っても、まだまだ日本は治安が良いんだな…ってのが感想。
オピオイド問題、尊厳死
興味深く読んだ。日本も早く尊厳死を認めてほしい。
BLM、中南米移民問題
どんな背景で保守トランプが支持されてきたのかが分かる。日本で暮らしていたら「生きるか死ぬか」みたいな事に巻き込まれることは無いに等しいけど、彼らは違う。私たちが見ているアメリカってごく一部のキラキラなんだ。
核開発
核と言えば真っ先にヒロシマ・ナガサキを思い浮かべる私。一方で核開発中の人体実験やソ連との開発競争の中で、たくさんのアメリカ人が死んでいて、彼らも核の犠牲者。そう言われれば当たり前だと思うけど、言われなければ気にも留めなかった。原爆を落とされた日本と落としたアメリカ。両方の視点から見て考えることの大切さと難しさ…思考は深まるが…難しい。
性犯罪者、メーガン法
性加害者の名前、住所、顔写真などを住民に開示する法律がある。住民に安心を与える一方で釈放後の犯罪者の生きる道が閉ざされている。
子を持つ親としては、犯罪者が保育士に紛れたり、同じマンションに住んでしまったり…を防げるという意味で、こういった法律には賛成できる。が…。小児性愛者は性的指向のひとつ。彼らが性犯罪も自殺もせずに済むためには何が必要なのか。答えのない問題だ。
知らない世界を知り、様々な問題について考えるきっかけをくれる読書だった。好き。 -
Posted by ブクログ
窮屈で出る杭は打たれる国、ニッポン。それに比べてアメリカは自由であり、寛容であり、成功を追求できる国。と、思っていたけど、実はそうではないらしい。
最近では日本とは比べ物にならないほどの格差や差別がアメリカ国民を分断している。その境目がわかりやく見えてきたきっかけがトランプ大統領の登場だった。著者はそんな分断の境目を訪れ、そこに住む人々の暮らしをながめながら、アメリカの苦悩を明らかにする。
薬物や銃を容易に入手できる地域、黒人や先住民を排除する地域、性犯罪者が集う地域、放射能に汚染されている地域。著者が訪れた分断された地でその孤立性はますます拡がっている。著者はそんな彼らを批判せず、日本人と比べることもせず、自由を愛して、求め続けた国民のアイデンティティとして冷静に報道する。が、その行き着く先にはディストピアしか見えない。