来栖夏芽のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
シリーズついに最終巻!人間嫌い教師ヒトマが、人外教室を通じて人間に興味を持つまでの5年間の軌跡がついに終わるのか…。過去だとドラキュラやロボット系、最近では『葬送のフリーレン』など、「人同士ではなく、人外の存在を通じて人間を知る」という作品になぜ惹かれるのだろうか。
現実、特に日本では自己責任という他責思考、弱者に厳しくドロップアウト後の復帰が難しいなど、他人に無関心な傾向があると感じている。空気が支配し、周囲から浮かない、迷惑をかけないという文化が復帰に歯止めをかけている。それが日本特有の引きこもりの長期化にも繋がる。
そのような社会から逃れたいが、孤独には生きていけないため繋がりが欲しい。そのニーズに応えているのが、キャラ文化やネット・アバターなどの匿名文化な気がする。
直接通じ合う関係性ではなく、キャラや匿名というヴェールを被った一定の距離を保つ関係性。石田光規『「人それぞれ」がさみしいー「やさしく・冷たい」人間関係を考える』という本があるが、そのサブタイトルのとおりの関係性だと感じる。日本の場合それが互いの尊重という考えと結びついた合理性になっている。
そういう考え方に対し、人同士ではない関係性という要素がスッと入り込みやすいのかもしれない。
この関係性が特に表現されているのが、この巻で登場する紺野。彼女は「ニンゲンに復讐するため」に人外教室で学び、人間になろうとする。その思想の背景には、過去のトラウマが関係している。
そして、同級生のアイドル的存在若葉のファンクラブ会員で推している。しかし、若葉は友人として接して欲しいと距離を詰め、紺野は拒否してしまう…。
ヒトマが間に入り、2人はしっかりと話し合い向き合っていく。これが紺野の考えが少しずつ変化していくきっかけとなる。
同時に人間嫌いのヒトマは、人外生徒の悩みにしっかりと向き合い、彼女らの夢を応援し、卒業を見守る過程を通じ、人間に関心を持っていく。
行動や考えが変わることが成長への契機。様々な作品でも、時にはぶつかり、恥が許され、互いを尊重できる相手を見つけて、深い人間関係を結んでいくことを描いている。優しい関係だけでは、自身を改善させることができない。
私もこのシリーズを通じて改めてヒトマを見習い、そういう関係性を築いていきたいと感じた。 -
Posted by ブクログ
ハートフルコメディとして各登場人物にしっかりとフォーカスが当たっていて、読んでて気持ちがいい。学校の先生である主人公の「人間」と4人の人外生徒」たち。各章でそれぞれの生徒たちがそれぞれの悩みに向き合い成長していく。各章冒頭に各生徒たちの語りの部分があるのだがここがまたグッとくる。
意外性や仕掛けの部分もしっかりしていてアクセントもバッチリ、いいキャラ付けにもなっている。
話の構成は各キャラクター達にスポットを当てた短編が繋がって1つの長編になっている、といった感じだ。その分話の脱線が無く集中しやすい。それが全員分あって最後にひとつの作品として纏まっていく。
あれ、ここで終わりか?まだ...と思ってからのエピローグのオチの付け方も良かった。
もう更に主人公にフォーカスを当てたエピソードもちょっと読みたかった。次巻が出るならそこに期待したい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ(少し上から目線と思えるようなことも書きます。不快に思われた方がいらっしゃいましたらごめんなさい)
一度教師として失敗してしまった主人公が人外だらけの学校でもう一度教師となり、生徒たちとの交流を通して人間として教師として生徒たちと成長していく物語。
生徒一人一人の抱える問題が丁寧に深堀りされて描かれており、解決にも納得感があった。それぞれの生徒に対し作家が描きたいことがはっきりしていたのもよかった。加えてその深堀りの手法も安易に過去回想とかに頼らず、その場で主人公が経験することで知っていったところも読み応えがあった。また、それぞれの章には三題が決められていたが、物語に上手く溶け込んでいて違和感がなく作者の力量には舌を巻いた。主人公の人外を受け入れの早さもゲーム好きという要素のおかげで理由付けもなされていて小道具の使い方が上手かった。
ただ最初の方で設定を羅列するような形で並べたり、同僚には趣味がゲームだと言うのを躊躇ったのに生徒には何の躊躇いもなく言ったり、校長のセリフの語尾が大事なところでなくなるところがあったり、最初の自己紹介で主人公が人間が嫌いだと言った直後に人間が好きか聞かれていたりとといった細かな気になる点もあった。もしかしたら後書きで書いていたページ調整のために削った影響なのかもしれないが。
後、これは私の読解不足なのかもしれないが、主人公の成長に関しては上手く感じることができなかった。例えば教職に失敗して人間不信になる描写があるのに再び教職を選んでいるところ(もし再起という意味なら頑張ろうという意気込みの描写や生徒が人間じゃないところへの拍子抜け感が欲しかった)とか、過去に人間不信になっていたにも関わらずその過去が性格に対し影響を与えているように思えないこと(ただの地雷持ちのように感じられてしまった)、自分はコミュ障だと自己評価しているにも関わらずそういう風に思える描写がなかったりといった自己評価と実際の解離とか、生徒の悩みを助けた後で人間のことを見直すような描写がないとか、割と匂わせて引っ張っていた主人公の過去をあっさり自分の言葉で言ってしまうところとか、生徒の成長に重きを置いていたためか主人公に関して深堀りができていなかったように感じた。
それでもとても心地良い読後感で楽しめた。登場人物も魅力的でダレることなく読めた。今回卒業できなかった登場人物たちの続きや卒業生の日々の生活をもっと読みたくなった。最後のどんでん返しも伏線がしっかりと張られていて良い意味で裏切られた。個人的なことを言えばラノベが久々なためか主人公の年齢的にノリがきつい部分があり、年を取ったと実感した。次巻が出てもまた読みたいと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公が赴任してニ年目となり、新しい生徒と共に一年を過ごす物語。
正直に言うと、一作目より心が揺れ動かなかった。設定上仕方ないことであるが、舞台となる場所やイベントが限られすぎていて、一巻で見たように思える話が多かった。余計なことかもしれないが、ヒトマ先生との物語のおかげでできた新しい行事やちょっとした小物などがあるといいのかもしれない。
また、一作目と比べ、元々人間的・性格的に足りないというキャラが少なく、先生が生徒を知る話になっているようにも思えた。万智の話が特にそうで、成長や変化が分からなかった。回想で人物の深堀りをすることも多く、置いてけぼりを感じた。加えて、教師という特性上仕方ないのかもしれないけど、生徒の成長の瞬間に一緒にいられないため、いさきのことや龍崎のことが、ただの事後報告のように見えた。一作目のように生徒と劇的な状況を助け合って乗り越えることが少なかったのが残念だった。
後、細かいところではあるが、章ごとにある三題が以前は上手く本編に絡んでいたが、今回は検証した訳ではないため違う可能性もあるが、章の始めに三題に関しての言及がなされていることが多く早めに処理しているような印象を受けた。
ただ、一作目と比べ主人公や人間と人間以外の種族の違いに関して深堀りされていてよかった。後悔をやり直すに関しての考えの違いが、次の巻に繋がることもとても面白かった。