緒方富雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
杉田玄白らが「ターヘル アナトミア」を翻訳した顛末を玄白本人が記した日記というか記録というか読物です。
この一事は小学生でも習うような有名な出来事ですが、歴史の単なる1コマとして簡単に流してしまうには勿体ない事がこの本を読めばよくわかります。
この一事が如何に無謀なチャレンジだったのか!
どれだけの絶望からチャレンジしなくてはいけなかったのか!
福沢諭吉が読む度に何度も涙した、というエピソードからもよくわかります。
こういった人たちが日本人にいたという事実は誇りですし、知っておくべきだと思います。
そしてせっかく母国語でこんな素晴らしい足跡に触れる事ができるのですから、なるべく原文に近い -
Posted by ブクログ
83歳の杉田玄白が日本の洋学受容の歴史を回顧した本.小泉信三「読書論」に引用されていたので読んでみた.この本のハイライトは,もちろん,小塚原で解剖をみて,解体新書の翻訳を決意し,艱難辛苦をへて訳業を完成させる部分である.翻訳の決意をしたとき,玄白はすでに39歳,前野良沢にいたっては49歳だった.江戸時代にはこれはもう晩年と言ってもいい年齢だろう.それから全く経験のない大事業をなそうというのだから,とてつもない.世の中に役立ちたいというひたすらな情熱が感動的.
文章は読みやすい.本文はゆったりとした組み方で60ページしかない.詳しすぎるくらいの注と学術的な解説が130ページついている.