新年、NHKの名盤ドキュメントでYMOの「ソリッドステートサバイバー」をやっていて、このTVのシリーズは2010年のお正月にオンエアされた荒井由実の「ひこうき雲」のマスターテープを田町のアルファスタジオで聞き直す、みたいな感じで始まってのを思い出しました。YUMINGからYMOまで70年代の日本の音
...続きを読む楽をアップデートしたのはアルファレコードというレーベルでした。(その当時はレーベルって意味もわかっていなかったけど、イケてるレコードには必ずアルファ印があったんだよね…)そのレーベルの総帥が著者 村井邦彦でした。でも経営者やプロデューサーである前に赤い鳥の「翼をください」とか、トワ・エ・モワの「ある日、突然」のエバーグリーンの作曲者としても有名でした。彼の成し遂げたアップデートとは、音楽の中から土着性を排除というか、世界に通用する純度の高い音楽性というか、ベタッとしないカラっとした都市の音楽の先駆けみたいなことなのかな?と思っていました。本書を読んで慶應ライトミュージックソサエティ由来の豊かじゃないと育めないハイソサエティミュージックカルチャーが成し遂げた音楽の革新がアルファだったのだと思いました。それが、現在でも続いているのがすごい。ジョン・ウィリアムズやミッシェル・ルグランなどの巨星との気さくな交流、業界の大立者との友情などなど。ネイションはあるけどボーダーのないソサエティの日常が淡々と綴られています。そして合間に現れる天才たちの創作論。ミッシェル・ルグランがストラヴィンスキーの言葉として伝える「芸術は、枕の上に新しい場所を見つけることで成り立つ」とか、痺れます。たぶん、著者の屈託のない素直な芸術への尊敬の力が、彼の周りをこんなに豊かにするんだな、と思います。彼が今、湿度が無く、透明なLAの空気の中で暮らしているのも必然のよう。途中で挿入される2015年の「ALFA MUSIC LIVE」のプログラムのために書いた「この美しい星、アルファ」も読めてよかったぁ!