村井邦彦のレビュー一覧
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国民的スタンダードの「翼をください」を作曲し、おっさんカラオケ永遠の讃美歌「マイウェイ」の版権をいち早く取得し、自ら立ち上げたレコード会社の第一弾歌手にユーミンを掘り出し、世界的レコード会社と組んでYMOをグローバルに仕掛ける。
そんなとんでもない音楽プロデューサー、作曲家が実在するのである。
日経「私の履歴書」連載当時からその真の「エリート」っぷりには瞠目していたが、今回の書き下ろしエピソードを読んで改めて本物ぶりに脱帽した。
世界各国の作曲家、レコード会社の経営者、芸術家、港区で、米国で、パリで。これでもかというくらいの交友関係が紹介される。そしてそれがびっくりするくらい自然で嫌味がない。
ひるがえって今どきのSNS。ここでも確かに、え、この人とこの人って繋がってるの、という話が日々投稿されている。「xxさんとごいっしょさせていだきました!」とか「xxさんとご縁をいただきほにゃらら株式会社の社外取締役に就任させて頂きました!」とか。すごいなという人もいる。でもこの本はそういうものとはなんだかとっても違う。何が違うんだろう、と考えながら読み進めているうちにようやくわかってきた。
要すれば、SNSさんたち(の多く)が「利害関係によって結びついた人脈」を語っているのに対して、本書の著者は「才能によって結びついた友情」を語っているのだった。
そして前者が感謝です感謝ですと連呼しながら結局自分のことを語っているのに対して、著者は「彼とは初対面から意気投合した」なんてことをさらっと書きながら結局自分のことではなく自分の関わった作品の話をしているのだった。
要するにそういうのがエリートってもんなんじゃないの、と思ったりするわけである。そして我々一般人は、この(人脈ではなく)交友から生まれた数多の芸術を存分に味わえば良いのである。
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Posted by ブクログ
一昨年の10月、山内マリコの「すべてのことはメッセージ 小説ユーミン」を読んでいる同じタイミングで日経新聞で連載されていた村井邦彦の「私の履歴書」が一冊の本になりました。連載から本になるまでの間に高橋幸宏、そして坂本龍一が召されて、YMOが伝説としてしか存在しなくなる時代に入ってしまったような喪失感に包まれる中で、村井の記憶の記録が残されたことは悲しみの中の幸運かもしれません。日本の音楽シーンだけではなく、著者の長年の友人であるA&Mレコードのジェリー・モスやエイブ・ソマーもこの期間に亡くなっていることを知りました。著者の先駆性は本人自身が圧倒的なメロディーメイカーであることと、スタジオAを創出した音楽の作り方の革命を起こしたことと、著作権を確立したビジネスマンであること、と並んでアメリカのA&Mやフランスのバークレイレコードとグローバルなネットワークを個人的な友情関係で結んだことにあると思います。その基盤には飯倉の「キャンティ」という文化サロンの存在が埋まっているのだと思います。かのレストランは60年代から70年代にかけてシリコンバレーならぬ「日本のカルチャーバレー」でした。それは二度と生まれない特異点なのか?才能と才能、センスとセンスが世代と国境を超えて絡み合う、そんな場所は、今、どこにあるのでしょうか?いや「We believe in music!」音楽を信じましょう。それはそうと著者がキャンティの川添浩志のキャンティ以前のフランス時代を書いた「モンパルナス1934」、早く読まなくちゃ!
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Posted by ブクログ
新年、NHKの名盤ドキュメントでYMOの「ソリッドステートサバイバー」をやっていて、このTVのシリーズは2010年のお正月にオンエアされた荒井由実の「ひこうき雲」のマスターテープを田町のアルファスタジオで聞き直す、みたいな感じで始まってのを思い出しました。YUMINGからYMOまで70年代の日本の音楽をアップデートしたのはアルファレコードというレーベルでした。(その当時はレーベルって意味もわかっていなかったけど、イケてるレコードには必ずアルファ印があったんだよね…)そのレーベルの総帥が著者 村井邦彦でした。でも経営者やプロデューサーである前に赤い鳥の「翼をください」とか、トワ・エ・モワの「ある日、突然」のエバーグリーンの作曲者としても有名でした。彼の成し遂げたアップデートとは、音楽の中から土着性を排除というか、世界に通用する純度の高い音楽性というか、ベタッとしないカラっとした都市の音楽の先駆けみたいなことなのかな?と思っていました。本書を読んで慶應ライトミュージックソサエティ由来の豊かじゃないと育めないハイソサエティミュージックカルチャーが成し遂げた音楽の革新がアルファだったのだと思いました。それが、現在でも続いているのがすごい。ジョン・ウィリアムズやミッシェル・ルグランなどの巨星との気さくな交流、業界の大立者との友情などなど。ネイションはあるけどボーダーのないソサエティの日常が淡々と綴られています。そして合間に現れる天才たちの創作論。ミッシェル・ルグランがストラヴィンスキーの言葉として伝える「芸術は、枕の上に新しい場所を見つけることで成り立つ」とか、痺れます。たぶん、著者の屈託のない素直な芸術への尊敬の力が、彼の周りをこんなに豊かにするんだな、と思います。彼が今、湿度が無く、透明なLAの空気の中で暮らしているのも必然のよう。途中で挿入される2015年の「ALFA MUSIC LIVE」のプログラムのために書いた「この美しい星、アルファ」も読めてよかったぁ!