あらすじ
「翼をください」「虹と雪のバラード」……。
日本を代表する作曲家が綴る初のエッセイ。
日本を代表する作曲家でアルファレコードの創業者、村井邦彦初のエッセイ集。同人誌『月刊てりとりぃ』に2011年から連載している「LAについて」を書籍化。今や国民的唱歌となった「翼をください」の作曲者で、荒井由実、赤い鳥、YMO、ハイ・ファイ・セット、ガロなど、多くのアーティストを世に送り出した著者の人脈は幅広く、60 年代末からパリ、ロンドン、LA、NYなど世界中を飛び回り、ビジネス的にも音楽的にも多くの要人と交流している。そこで出会った人々との思い出やエピソードは単なる交友録にとどまらず、日本のポップス史における貴重な証言でもある。現在の居住地であるLAを中心とした交流を描きながら、関連する音楽、映画や舞台などに話が発展していく独特の内容は、優れた文化論としても読めるだろう。
《CONTENTS》
◎第1章:2011年 広い空の下、フリーウェイはひしめく
◎第2章:2012年 偏西風が慈雨をもたらす
◎第3章:2013年 コロナ・ビールをラッパ飲み
◎第4章:2014~2015年 曲は歌って書け
◎第5章:2016年 We Believe in Music
◎第6章:2017年 過去に学ばずして創作はありえず
◎第7章:2018年 音は暗闇のなかから生まれ、暗闇に消えてゆく
◎番外編:この美しい星、アルファ
◎本書に登場する人々
アーメット・アーティガン(アトランティック・レコード創業者)、アル・シュミット(エンジニア)、エディ・バークレイ(バークレイ・レコード創業者)、クリスチャン・ジャコブ(ミュージシャン)、ジェリー・モス(A&Mレコード創業者)、ジョン・ウィリアムズ(作曲家)、トミー・リピューマ(音楽プロデューサー)、バート・バカラック(作曲家)、ホルヘ・カランドレリ(作編曲家)、ミシェル・ルグラン(作曲家)、ルー・アドラー(音楽プロデューサー)、レスター・シル(音楽プロデューサー)、朝妻一郎(フジパシフィックミュージック会長)、宇野亞喜良(イラストレーター)、川添浩史(キャンティ創業者)、坂本龍一(ミュージシャン)、高橋幸宏(ミュージシャン)、細野晴臣(ミュージシャン)、本城和治(音楽プロデューサー)、松任谷由実(ミュージシャン)、梁瀬次郎(ヤナセ社長)、山上路夫(作詞家)、渡邊美佐(渡辺プロダクショングループ代表)、ほか
*著作権の都合により、この電子書籍には印刷版に掲載されている「美しい星」の歌詞は収録されておりません。
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Posted by ブクログ
新年、NHKの名盤ドキュメントでYMOの「ソリッドステートサバイバー」をやっていて、このTVのシリーズは2010年のお正月にオンエアされた荒井由実の「ひこうき雲」のマスターテープを田町のアルファスタジオで聞き直す、みたいな感じで始まってのを思い出しました。YUMINGからYMOまで70年代の日本の音楽をアップデートしたのはアルファレコードというレーベルでした。(その当時はレーベルって意味もわかっていなかったけど、イケてるレコードには必ずアルファ印があったんだよね…)そのレーベルの総帥が著者 村井邦彦でした。でも経営者やプロデューサーである前に赤い鳥の「翼をください」とか、トワ・エ・モワの「ある日、突然」のエバーグリーンの作曲者としても有名でした。彼の成し遂げたアップデートとは、音楽の中から土着性を排除というか、世界に通用する純度の高い音楽性というか、ベタッとしないカラっとした都市の音楽の先駆けみたいなことなのかな?と思っていました。本書を読んで慶應ライトミュージックソサエティ由来の豊かじゃないと育めないハイソサエティミュージックカルチャーが成し遂げた音楽の革新がアルファだったのだと思いました。それが、現在でも続いているのがすごい。ジョン・ウィリアムズやミッシェル・ルグランなどの巨星との気さくな交流、業界の大立者との友情などなど。ネイションはあるけどボーダーのないソサエティの日常が淡々と綴られています。そして合間に現れる天才たちの創作論。ミッシェル・ルグランがストラヴィンスキーの言葉として伝える「芸術は、枕の上に新しい場所を見つけることで成り立つ」とか、痺れます。たぶん、著者の屈託のない素直な芸術への尊敬の力が、彼の周りをこんなに豊かにするんだな、と思います。彼が今、湿度が無く、透明なLAの空気の中で暮らしているのも必然のよう。途中で挿入される2015年の「ALFA MUSIC LIVE」のプログラムのために書いた「この美しい星、アルファ」も読めてよかったぁ!