黒田賢治のレビュー一覧
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イラン現代史
イスラーム革命から核問題、対イスラエル戦争まで
著:黒田賢治
出版社:中央公論新社
中公新書 2882
現在のイラン国、イラン政権は、「イラン・イスラム共和国」(1979年~)であり、本書の原点となる
<イランの特徴>
・シーア派の盟主であり、スンニ派のサウジアラビアと敵対している
・かってのペルシャ、大国であり、文化、軍事の人材も豊富である
<前史>
1906~1911 立憲革命、立憲君主制への移行 ガージャール朝 アフマド・シャー(~1925)在位
1925~1941 レザー・ハーンがクーデタにより、1925年、パフラヴィー(パーレビ)朝を始める
1941 英印ソ軍がイランを占領、いわゆる、イラン回廊である、ソ連への補給路を確保
パフラヴィー2世が即位(~1979)
1951~1953 モサデグ 首相に 石油国有化政策を推し進めるも、CIAにより政権転覆
1962,64,68 農地改革を実施
1963 白色革命 第2代国王パフラヴィー2世が行ったイランの近代化、西欧化のための改革
1979.02.11 イラン革命 パフラヴィー2世が失脚、ホメイニ師が指導者へ、イラン・イスラム共和国に
パフラヴィ政権の特徴
・秘密警察SAVAKによる静かな恐怖政治(イスラエルMOSSADがベース)
・ソ連、周辺アラブ国家の情報を収集しCIAに提供していた(冷戦下のアメリカの橋頭保)
・親米、親イスラエル
・米より、大量の武器の売却を受ける、米の勧めで、核開発に着手していた
・米支援により、イラン・イラク国境のクルドを支援、優位な国境線を締結(アルジェ協定)
<イラン・イスラム共和国史>
革命政権の特徴
・イスラーム法学者が牽引する勢力
・近代的世俗的知識人に牽引される勢力
・マルクス主義左翼勢力
・反米的(アメリカはペルシャ湾でのソ連のプレゼンスを阻むため、封じ込め作戦を行っていた)
・イランは、米国を大悪魔、イスラエルを小悪魔という。
・一方、アメリカは、北朝鮮、イラク、イランを悪の3枢軸という
・シーア派の三日月地帯(イラン、イラク、シリア、レバノン)、アメリカが叫んでいるイラン脅威論
ホメイニ後は、ハーメネイー師、ラフサンジャーニー、アフマディーネジャード、ライースィー……
アメリカ・イスラエルは、最高指導者を狙い撃ちに暗殺している
イランの二つの軍
①正規軍 大統領の監督下にある
②イスラム革命防衛隊 最高指導者(ホメイニ)の監督下にある
ゴドゥス軍 革命の輸出、ホメイニの親衛隊
バスィージ 大規模民兵 物量作戦
陸、海、空軍
1979.11.04~1981.01.20 アメリカ大使館人質事件
1980.09.22~1988.08.20 イラクがイランに侵攻、イラン・イラク戦争(第一次湾岸戦争)
1986 イラン・コントラ事件 アメリカがイランと裏取引、そこで出たもうけを、ニカラグアで使用していた
1990.08.02~1991.03.03 イラクがクウェートに侵攻、イラク・クウェート戦争(第ニ次湾岸戦争)
2001.09.11 同時多発テロ イランとアルカイーダは敵対関連、それは、アルカイーダは、スンニであり、シリアの敵だから
2010 緑の運動 イランのアラブの春、国民の発言力が強まる
2023~ パレスチナ・イスラエル戦争 ガザ地区 ハマスの後援はイラン
PLOはイスラエルと妥協したが、ハマスは、イスラエルとは妥協しない、パレスチナの解放を目指してる
イスラエルはシリアの高原を占領し、ドローンによる奇襲攻撃を受けないようにレーダー監視している
2024.05.19 ライースィー大統領暗殺
2024.07.31 イラン領土でハマスのイスマーイール・ハニーヤ暗殺
2024.10.01 イスラエルのイランへのミサイル攻撃
2025.06.13~2025.06.25 十二日間戦争 イラン、イスラエル戦争
2026.02.28~ イスラエル・アメリカによる攻撃、ホルズム海峡封鎖
核開発
もともと、パフラヴィ政権下で、アメリカの指導で核開発を行っていた
事実上イスラエルが核を保有しているため、その対抗手段?
イラク、サウジ、パキスタンへの抑止?
2003.11 英独仏と「テヘラン同意」原子力の平和利用
2004.11 英独仏と「パリ協定」ウラン濃縮停止と、EU協力
そこに、アメリカとイスラエルがちゃちゃを入れてきた
アフガニスタンといい、イランといい、アメリカは自分で蒔いた種で反撃をくらっている
市ヶ谷の自衛隊本部を爆破したり、首相官邸にいる高市早苗をドローンや、ミサイルで爆殺するようなものである。これだけ、好きかってやっているのだから、当然ながら、反発も多い
中東に平和が来る日ははたして、くるのであろうか。
目次
はじめに
序章 近代国家建設と東西冷戦構造
1 パフラヴィー朝の成立と近代国家への道
2 モハンマド=レザー・シャーの専制政治と白色革命
3 反王政運動と王の国外退去
コラム① 在外イラン人学生の運動
第1章 ホメイニー体制と革命勢力の角逐
1 ホメイニー師の帰還と革命の達成
2 バーザルガーン暫定政府と憲法制定
3 イスラーム共和国体制と大統領選挙
コラム② 反西洋とファストフード
第2章 イラン・イラク戦争とイスラーム共和体制
1 押しつけられた戦争と「法学者の統治」
2 広がる戦火と「コントラ事件」
3 戦争の終結と新たな体制の模索
コラム③ 亡命者とテヘランゼルス
第3章 ハーメネイー体制と政治的自由
1 新体制と戦後復興 ラフサンジャーニー政権(1989〜97)
2 体制の変容と政治的自由 ハータミー政権(1997〜2005)
3 体制の問い直しと宗教実践の多義性
コラム④ レスリングとサッカー
第4章 新保守派の台頭と「緑の運動」
1 国際関係の緊張とアフマディーネジャード政権(2005〜13)
2 国際的孤立と「緑の運動」
3 市民生活の変容と核開発問題
コラム⑤ 科学者と頭脳流出
第5章 防衛戦略と核問題
1 革命防衛隊の社会への浸透
2 革命防衛隊とロウハーニー政権(2013〜21)
3 核問題の解決と中東情勢の変化
コラム⑥ 日本とイランの国交一〇〇年
終章 暗雲垂れ込めるイスラーム共和体制の未来
1 ライースィー政権(2021〜24年)への期待と終焉
2 急変する国際情勢とペゼシュキヤーン政権の発足
3 イスラーム共和体制の未来
あとがき
主要参考文献
関連年表
ISBN:9784121028822
出版社:中央公論新社
判型:新書
ページ数:288ページ
定価:1050円(本体)
2025年11月25日発行 -
Posted by ブクログ
現在のイランを理解するための基底を知ることができた。
イラン革命の背景がよく分かり、戦後も植民地的な活動を続けた米英への不信感が今でも残るのは、想像に難くない。宗教権威者が頂点に立つイスラム共和制では、国際問題に対して政府が柔軟に対応しようとしても、それが容易ではないことを理解した。経済を中心として回っている国際社会の論理と宗教の論理が一致しないことがあるのは、当然だ。その上に、革命防衛隊が最高指導者に直属していて、政府のコントロールを受けない構造が、この国の外交を難しくしているように見える。
一方で、傍目には宗教で縛られているように見えるこの国も、市民はしたたかのようだ。選挙では被選挙人に制限が掛かるのは想像できるが、それにもかかわらずポピュリストが大統領に選出されることがあるのは、面白い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレww2中の連合国のイラン侵攻
→ソ連への脅威からドイツと親密だったことに原因
モサデグの石油国有化挫折や国王の専制政治
→イラン国民のアメリカに対する敵対心
ただしアメリカは冷戦的な問題からイランへの限定的な接触は継続(イラン・コントラ事件)
シーア派の三日月地帯
→イラン、イラク、シリア、レバノンのシーア派勢力
ヒズブッラーやフーシ派、アサド政権と良好関係
聖地問題でイスラエルとは対立しているため緩衝地帯を作る目的もある
核問題でアメリカと対立
JCPOAが軍地施設の査察を条件としていないこと、将来的にイスラエルの脅威となることが米国の軍事予算を圧迫することが動機
政治、経済分野で革命防衛隊が影響力をつけているため、最高指導者の後継者問題にも介入、傀儡化する可能性
2025.6対イスラエル戦争 -
Posted by ブクログ
黒田賢治「イラン現代史」(中公新書)
著者はペルシア語の発音に忠実に表記されているが、ここでは一般的な表記で書く。
第一次世界大戦後のカージャール朝の崩壊からパーレビ朝2代の歴史を前史として、主にホメイニの革命でイスラム共和国を作ってからの歴史を描いている。1代目のレザー・シャーのドイツへの接近を嫌ったイギリス・ソ連が1939年に彼を放逐、2代目のモハンマド・レザーが即位。第二次大戦後、石油の利権をめぐり国内で不満が高まりモサデグ政権がイギリスと対立。モサデグがソ連寄りになったことでイギリスとアメリカがクーデターを仕掛け、新米政権を樹立。石油利権は会社・イラン政府が利益折半で合意。その後、イラン政府はアメリカの支援を受けて近代化に爆進。農地改革や世俗化を進めるがイスラム勢力は批判を強める。国王は秘密警察に頼り、イスラム法学者のホメイニを国外追放。ホメイニはイラクを拠点に反政府運動を展開。その間、ホメイニはイスラム法学者が統治するのがイスラム的に正しいという考えを持つに至った。
革命当時のイランの反体制派は世俗的な自由主義者、イスラム主義者、共産主義者がいたが、ホメイニが革命防衛隊を巧みに使い、自由主義者や共産主義者を放逐しイスラム共和国を構築。選挙で選ばれた三権分立の政府を最高指導者たるイスラム法学者が指導する、さらには候補者となる資格もイスラム法学者が審査するという体制を作り上げた。
その後は、イラクとの戦争、ホメイニ死後ハメネイ体制確立までの一時的な政治的自由などもあった。ただ核問題で国際的に孤立化する中で革命防衛隊が国家を主導するようになったと。
良い本だと思うが、イランの政権の血塗られた面について、まことにあっさりとしか触れられていないのは残念に思う。 -
Posted by ブクログ
アメリカとの戦争が勃発したので手に取った本。イラン戦争前までのイランの歴史の本。イランの成り立ち、考え方がよく理解できた。
異なる価値観で生きているためどちらが良くてどちらが悪い、どちらが上でどちらが下、という問題ではないのだろうと思う。同じイスラム教の中でも考え方が異なる。アメリカと交流があった時代もあり、常に争っていたわけではないことも理解した。ただ、宗教とは自分の拠り所として神を信じているはずなのに、考え方が違うだけでなぜ殺し合いになるのかが理解できない。一部の国民は争う事を望んでいるのかもしれないが、多くの国民はただ普通の生活を望んでいるのではないかと思う。行きすぎた考え方、相手の考えを尊重しない自分本位な考えが戦争を生むのか。一部の権力者の引くに引けない立場が戦争を引き起こしている部分も多分にあるのだろう。
生まれた国が違うだけで全く異なる人生になる。当たり前の事だが世界を見渡した上で自分の現在地を見る事が必要だと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレイランの核開発を止めると言う大義名分の筋が通ってるのか納得いかなくて読んだ一冊。
読む前よりもイランのナラティブを想像できるようになった。
アメリカ側からみたイランについての本も読んでみないと、答えは出せないけど。
こんだけ拘泥する国ってことは、アメリカ的にも何か放って置けない理由があるはず。
以下備忘録
1. 核開発問題はトランプ政権の「自業自得」といえそう。
• オバマ政権: イランと核合意を結び、イランは制限と監視の約束を遵守していた。
• トランプ政権: 2018年に合意を一方的に破棄し、経済制裁を復活させてイランを追いつめた。
• イランの反撃: 制裁解除の交渉カード(脅し)として核開発を再開したため、現在の核問題の根本原因はアメリカ側にあるのでは?
2. 歴史的な内政干渉と要人暗殺によるトラウマ
• 1953年クーデター: アメリカ(CIA)の介入によるモサデク首相失脚がすべての内政干渉の原点。
• 要人暗殺: 2020年のソレイマニ司令官暗殺など、アメリカは度々強硬手段に出ている。
• 2026年の現状: 米イスラエルの攻撃(ハメネイ師殺害報道など)に対し、イランが徹底抗戦するのは歴史的・心理的に必然の反応だと想像できた。
3. イランの報復行動(2026年の現実)
• ホルムズ海峡の封鎖: 米イスラエルの奇襲攻撃に対する報復として、事実上の海峡封鎖を実施している。
• フジャイラ港爆撃: 原油の迂回輸出拠点であるUAEの施設へも継続的にドローン攻撃を行い、徹底的に抗戦している。
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Posted by ブクログ
大悪魔アメリカ、小悪魔イスラエル
だそうです
なるほど〜イスラームにも悪魔っているんやな〜などとまた本筋から外れまくったことを思ったが、よくよく考えたらイスラム教もキリスト教も元々は同じ宗教やもんな
はい、というわけで『イラン現代史』を学ぶ
今や世界でもっとも混迷する紛争地帯となっているイランですが、わいから言わせればあっちもこっちもである
紛争ばっかりの世界
嫌になっちゃうね
この本の発行は2025年11月、そこからさらに大きく事態は動いていて、本書内で大きくページを割かれていたハーメネイー師も、もういないっていうね
果たしてなぜイランは今こんなことになってるのか?ってことをもっと知りたくて読み始めたんだが、よく分からんかった
全部全部イスラームのせいってわけでもないだろうし、アメリカを筆頭とする西欧諸国にも問題はあったんだろうなとは思う
思うが、やっぱり核開発はやめてほしい
そしてこの本で知って一番びっくりしたのは、イランてガソリンの輸入国なのよ
えー!?なんでと思ったら要するに消費量に対して精製能力が追いついていないらしい
原油を輸出して、ガソリンを輸入て意味わからん
戦争する前にそういうところなんとかしなさいよと突っ込みたい
シーア派だけに!(何ひとつ掛かってない)
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Posted by ブクログ
あとがきが2025年8月発行で11月刊。
1979年の革命から2025年7月までを短い言葉でたんたんと説明され、読みやすいコラムもあります。
読み手の力不足ながら、非常に入り組んだ複雑な状況と受けとりました。
最終章のタイトルは「暗雲垂れ込めるイスラーム共和国の未来」
最後に「われわれはどう生きるのか。あるいは、われわれはどこに行くのか-。(中略)、イラン現代史がその答えを用意しているわけではない。しかしイラン現代史を繙いてきたなかで明らかなのは、われわれはまだ可能性のなかに生きていること、外に広がる大きな世界を個人が変えうるといことである。それは困難で苦しく、時に犠牲も払われたりもするが、限界もない。」とあり、2026年1月にイランで起こっていることへの祈りとも思えます。