曽田長人のレビュー一覧

  • スパルタを夢見た第三帝国 二〇世紀ドイツの人文主義

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    現状の任命や運営の問題はさておき、日本学術会議は「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を発している。他方、本著で取り上げる人文科学は、ナチスの方針に対し無力であったばかりか、礼賛した経緯すらある。為政者を横目に正義や思想を語るのが人文科学ではなく、証拠主義で一貫せねば、学問としての本義も揺らぐだろう。しかし、歴史認識に垣間見るように、政治に侵されやすい学問であり、民族主義においての人文科学の限界を、そもそも想定しておくべきなのかも知れない。

    ヴァイマル共和国の文教政策は、人文主義的な古典語教育・古典研究に深い理解があったとは言いにくかった。これに不満を抱いていた人文主義

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    2023年08月15日
  • スパルタを夢見た第三帝国 二〇世紀ドイツの人文主義

    Posted by ブクログ

    ドイツの古典古代研究者のナチズムに対する対応と、ナチズムにおけるスパルタ称賛言説の流れを追う研究。基本的な見取り図としては、19世紀以来、ギリシアとドイツの親縁性という枠組みのもとで、古代ギリシア文化を重視する人文主義がドイツの教育プログラムにおいて支配的になっていた状況において、ゲルマン人とスパルタ人の人種的親縁性という見方が第三帝国において支配的となり、またそれを補強するような研究が奨励され、さらにはスパルタ人の生活・行動様式を第三帝国において再現しようとする流れが生じていった、というものである。こうした流れに対して、「第三の人文主義」の旗手であるイェーガー、そしてその圏内にいたハルダーが

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    2022年04月10日