曽田長人のレビュー一覧

  • スパルタを夢見た第三帝国 二〇世紀ドイツの人文主義

    Posted by ブクログ

    ドイツの古典古代研究者のナチズムに対する対応と、ナチズムにおけるスパルタ称賛言説の流れを追う研究。基本的な見取り図としては、19世紀以来、ギリシアとドイツの親縁性という枠組みのもとで、古代ギリシア文化を重視する人文主義がドイツの教育プログラムにおいて支配的になっていた状況において、ゲルマン人とスパルタ人の人種的親縁性という見方が第三帝国において支配的となり、またそれを補強するような研究が奨励され、さらにはスパルタ人の生活・行動様式を第三帝国において再現しようとする流れが生じていった、というものである。こうした流れに対して、「第三の人文主義」の旗手であるイェーガー、そしてその圏内にいたハルダーが、ナチズムに対する傍観・協力を選択していったこと(とはいえ、「第三の人文主義」の可能性はナチズムに対する無力・協力に尽きるわけではない)、ギリシアを「他者」として実証的な考察の対象にしていたフリッツの例外的なナチスへの忠誠拒否という対応、そして戦後の研究プログラムにこうした対応がどのように影響したのかという点まで、かなり詳しく論じられている。著者は20世紀ドイツの人文主義の思想的弱さも指摘しながら、同時代の政治や社会に適合していく柔軟さという、ある意味では長所とも捉えられる性質も指摘している。古典古代の議論を現代においてどう活かすかということを考える者にとって、非常に興味深い事例を提示してくれている。

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    2022年04月10日